culture & history

日本はスターリンが目指す世界共産革命の主たるターゲットの一つであった。

2023年1月5日 木曜日 晴れ

渡部惣樹・福井義高(対談)「正義の戦争」は嘘だらけ! ネオコン対プーチン WAC 2022年8月15日初版発行

「スターリンはロシアではなく、ソ連社会主義体制と、集団化された農業そして重工業と自己を同一化していた。ソ連体制は全くロシアではなかった。」

「・・スターリン体制を支えていたのは、(以下のような)信念(belief)であった: 未来への信念、救済(salvation) への信念、社会主義の正しさへの信念、そして歴史の法則への信念。 この信念がスターリンのテロルを正当化した。この意味で、ソ連というシステムは、スターリンをその神とする信徒組織(religious order)といえなくもない」(黒宮『スターリン』から福井が引用、同書おわりに、p195)

・・スターリンを本来の共産主義からの逸脱とみることは正しくない。彼はレーニンそしてマルクスの正統な後継者であり、その「理想」を実現しようとした革命家であった。・・スターリンとトロツキーは全世界の共産化という目標では一致しており、そこに至る道筋がどうあるべきかについて見解を異にしていたにすぎない。トロツキーの「永続革命」と対比されるスターリンの「一国社会主義」は、まず世界共産化の基地としてソ連を経済的軍事的に強化し、国際情勢を見て、各国を順次「解放」していくという革命戦略の一環であった。実際、革命家であると同時に現実政治家であったスターリンは、目的に向かって着実に手を打ち続ける。そもそも、一国社会主義はスターリンの独創ではなく、ロシア革命後のボリシェヴィキの統一見解であり、レーニンはもちろん、トロツキーも含めソ連共産党の指導層は一国社会主義建設の可能性を確信していた。トロツキーが一国社会主義に反対を唱えるのは、自らが権力中枢から追われてからである。(福井、同書おわりに、p196)

 ・・二十世紀の日本人は共産主義、社会主義、その鬼子であったナチズム、ファシズムの中で生きてきた。日本はスターリンが目指す世界共産革命の主たるターゲットの一つであり、各国共産党同様、日本共産党はスターリンに隷従するコミンテルン日本支部であった。・・戦前の治安当局による共産主義者弾圧は、思想そのものを対象にしたものというより、基本的には外国(ソ連)に内通し暴力革命を目指す団体に対するテロ対策(counter-terrorism)と捉えることができる。・・・(中略)・・・ スターリンは・・理性と進歩を旗印とする西欧近代の申し子なのである。・・「・・スターリニズムは理性の啓蒙的ユートピア(Enlightenment Utopia of Reason)の終わりではなく、その成就なのである。・・実例でもって、スターリンは、合理主義が・・、西洋の伝統が同時に創ってきた別の啓蒙的価値から孤立していてはならないことを示した。とりわけ、個人的自由によってバランスを保たれることがなければ、この解放の原理(liberating doctrine)は狂気となる」  

今日、我々にとって真に危険な存在は、  この解放の原理の狂気に翻弄された過去を反面教師として、祖国ロシアの再建を自らの使命とするプーチンではなく、  この原理に取りつかれ、強大な軍事力を背景に自らの「理想」を全世界に押し付けようとするネオコンなのだ。(福井、同書、p199)

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 福井 ・・歴史に限らず文系研究者の主流を占めるのは、・・「反スターリン左派」です。共産主義そのものは良かったけれども、スターリンによって歪められたと。逆に言えば、スターリニストも反共も学界ではアウトサイダーです。(福井、同書、p183)

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 スペイン内戦:

 ・・スターリニスト(共産党)以外の人民戦線勢力も議会制デモクラシーの観点からすれば決して民主的ではなく、それどころか暴力革命を志向し実践していたのに対し、内戦前に彼らにファシスト呼ばわりされていた右派勢力のほうが民主的であった。(福井、同書、p188)

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2023年1月30日
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