学ぶこと問うこと

修士課程と博士課程

 

修士課程を修了し就職した場合と博士課程を修了し就職した場合の違い

 

2010年11月16日 (学生のOさん宛のお返事)

 

ご連絡いただきありがとうございました。ご苦労様です。

お問い合わせの件、

1.卒研のテーマを継続: 続けるのがベストです。ただし、最初の数年間はいろいろトライしながら経験を積んでゆく時期ですので、あまり厳密に考えず、学生の志向と希望によって、さまざま柔軟に対応したいと思います。

2.修士課程を終了し就職した場合と博士課程を終了し就職した場合の違い:

ご本人の志向によってさまざまなお答えが可能な質問です。Oさんのご希望がわからないので、以下の私のお答えは的はずれかもしれませんが、一般論としてお聴きください。将来的に個別のご相談にできるだけ対応したいと思います。

A.研究職を希望されている場合:

まずは、博士号の有無が大きな差になります。博士号があれば、研究職に応募することが可能です。本人(研究者)の希望で海外の留学先、国内の企業、研究所や大学などの就職先など、自分のテーマと方向性に応じて自分で選ぶことになります。

また、博士号の研究の成果(英語論文などの業績)で客観的な評価を受けることが可能です。修士卒よりも、業績という観点から、大きく抜きんでることが可能です(もちろん業績の質に依存しますが)。たとえば私の場合は、博士論文の仕事をさせていただいていた研究所で、3年間の仕事の成果を認められて、正規の研究員に採用していただきました。自分の力で自分の道を開いてきたという自然な成り行きなので、いわゆる就職活動とは無縁でした。やはりそれでも、その時は「とうとうこれで研究で身を立てることができた」と非常に嬉しかったのを覚えております。3年間頑張って博士をとるというのはそんな感じです。きちんとした仕事のできる博士の研究者は、数が少なく非常に貴重な存在であることは、昔も今も変わりがありません。

一方、修士号だけでは研究者としては不十分なので、名目上は研究職のような職種に就職できた場合でも、研究補助員のようなポジションが普通です。従って、頭角を現すほど頑張らない限り、そのグループ内での研究テーマを自分で選ぶような形にはならないことが多いでしょう。

このような状況から、将来研究職への就職を希望するのであれば、博士号をとることを強くお奨めしたいと思います。

B.研究職以外の職種の場合:

薬品や機器開発販売などで、博士号が直接的に有利な業種もいくつかあり、これらは、博士を卒業した後に研究職を選ばない場合にも候補となる職種かもしれません。

一般の業種に関しては、博士号が明らかに有利になる場合は、それほど多くないかもしれません。が、たとえばマスコミ関係や科学ジャーナリストなど、表現し人に伝えるような職に就く場合には、博士の課程で培った科学する力・考え方のようなものは、10年先など将来的に非常に大きな実力の差になって現れることと思います。

一方で、中学高校などの教育職、イラストレーターや情報関連などの技術職を初めとして、職種によっては、修士の学識で十分に幅広く通用する分野もあります。もともとそのような方向を目指している場合には、そのような目的意識をもって修士研究を進めてゆくと実り多いものと思います。このあたりはそれぞれの才能と向き不向きの問題が大きく、個別にお考えいただけると良いかと思います。

 

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修士課程を修了し就職した場合と博士課程を修了し就職した場合の違い  2010年11月16日 (学生のOさん宛のお返事)

 

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