philosophy

愛という試練:マイナスのナルシスの告白

2015年5月14日

中島義道 ひとを愛することができない:マイナスのナルシスの告白 角川文庫 平成19年(オリジナルは「愛という試練:マイナスのナルシスの告白」紀伊國屋書店 2003年。これを改題し加筆・改稿のうえ文庫化したもの)

読み終えたのは4月30日、郷里に帰る飛行機の中で。通常はすぐに読書ノートに抜粋するのだが、今回は身辺の事情で、ノートに書き写すことができなかった。

以下引用:

あるいは、逆に私(私注:中島さんのこと)の苦労など自分の苦しみに比べれば蚊が刺したようなものだとせせら笑う方々は、心ゆくまでせせら笑った後で、その困難に全身で立ち向かってもらいたいのだ。「もういいや」とやけっぱちになる前に、絶望して死のうとする前に、困難な生き方もなななか味わい深いものだと居直ってもらいたいのである。(中島義道 孤独について:生きるのが困難な人々へ 文春文庫 2008年 オリジナルは文春新書1998年 から、p202、1998年付けのあとがきより引用)

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私の場合、「自分の苦しみに比べれば蚊が刺したようなものだとせせら笑」いたい気分にはならない。「自分の苦しみを」誇るようなルサンチマンは持たない。

しかし、中島さんの意図に逆らってしまうが、この中島さんの本を読んで、我が身を振り返り、中島さんが羨ましくなるのをどうしても禁じ得ないのだ。中島さんのお父様を自身の父に持てたとしたら、私はまるで極楽に生まれたような気持ちで幼少年・青年期の二十数年を生きられたのではないか・・・というのが正直な感想である。

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