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ゴーリキー 零落者の群れ

2017年9月2日 土曜日 晴れ

ゴーリキー 零落者の群れ ゴーリキー短編集 上田進・横田瑞穂訳編 岩波文庫 赤627-1 1966年(原訳文は1950年;原作の発表は1894年から1897年)

 死と呼ばれているところの、すべてのものを滅ぼしてしまう神秘な力が、生と死との闘争の暗いおごそかな場面にこの酔っぱらいが登場して来たことに腹をたてて、自分の無情な仕事を一刻も早く片づけてしまおうと決心したらしかった。ーー教師は深い溜息をついて、低い呻き声をもらし、ぶるっと身を震わせたかと思うと、ぴんと手足を突っぱって、息をひきとってしまった。
 大尉は足をふんばって身体をゆらゆらさせながら、まだしゃべりつづけていた。
 ーー酒がのみたけりゃ、もって来てやるぜ。しかし、飲まない方がいいや、なあ、フィリップ・・我慢して、自分にうち克つんだ・・それとも、どうしても飲みたきゃ飲むがいいさ! 正直の話、なんだってそんなに我慢しなきゃならないんだ?・・なんのためによ? え、フィリップ、なんのためによ?
 彼は教師の足をつかんで、ひっぱった。
 ーーおい、フィリップ、お前眠ちまったのか? ・・・(中略)・・・ それぢゃ今夜は、ぐっすり眠ろよ・・死んじまったんでなきゃな・・(ゴーリキー、零落者の群れ、同訳書、p339-340)

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