2023年1月29日 日曜日 晴れ
ドストエフスキー 亀山郁夫訳 カラマーゾフの兄弟3 光文社古典新訳文庫 2006年(原作は1879-1880年)
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・・「アグリッピナさん・・」
「わたしはアグラフェーナよ、わたしはグルーシェニカなの、ロシア語で言いなさいよ、さもなきゃ、聞きたくない!」(同訳書、p291)
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・・彼女がだれを愛しているかは、目を見ただけでわかる。そう、いまや、生きていさえいればいい・・なのに、生きていくわけにはいかない、いかない、ああ、なんてのろわしい!
≪神さま、塀の下に倒れているあの男を生き返らせてください! どうか、この恐ろしい運命の杯をしりぞけてください! あなたは、数々の奇跡を行ってきたではありませんか、主よ、わたしと同じような罪びとのために! ・・≫
・・・(中略)・・・
≪たとえ恥辱の苦しみにまみれていようと、彼女の愛の一時間、いや一分は、残りすべての人生に値しないだろうか?≫この荒々しい問いかけが、彼の心をむんずとつかみとった。≪彼女のところへ行け、彼女ひとりのもとへ行くんだ、彼女の姿を見、声を聞け、何も考えず、すべてを忘れるんだ、たとえ、今日のこのひと晩だけでもいい、たとえ一時間でも、たとえ一瞬でも!≫ (ドストエフスキー、同訳書、p313)
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・・「さっき一羽のタカが飛び込んできたの、そしたらわたし、急に力が抜けてしまった。≪あんたって、なんておばかさんなの、あんたの愛している人が、すぐそこにいるじゃない≫っていきなり心がそうささやきかけたわ。あんたが入ってきたら、何もかもぱっと明るくなった。・・≫ ・・「じゃ、許してくれるのね、苦しめたこと? だって、わたしがみんなをさんざ苦しめたのは、憎しみのせいだったんだもの。あのおじいさんだって、わたし、わざと腹いせで狂わせてやったんだもの・・おぼえてる? わたしあれを思い出して、今日もグラスを叩き割ったのよ。『じぶんのいやしい心に』乾盃したの。ミーチャ、あんたはタカよ、どうしてもっとキスしてくれないの? ・・・以下略・・・」(ドストエフスキー、同訳書、p317)
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