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文明の歴史は、この挿話を持つのと欠くのとでは、大きな違いがある

陳舜臣 荊軻、一片の心 中国仁侠伝 陳舜臣中国ライブラリー29 集英社 1999年 

(成否は問題ではない)
 と、荊軻は自分に言いきかせた。
 文明を守る戦士として、彼は野蛮を代表する王を刺そうとする。誰かがやらねばならないことだった。 
 成功するにせよ失敗するにせよ、やったという事実を後世にのこすことが大事なのだ。文明の歴史は、この挿話を持つのと欠くのとでは、大きな違いがある。ーーー荊軻はそう信じていた。
・・・(中略)・・・
 荊軻、一片の心。ーーー唐の詩人李賀(りが)は、名剣の冴えた光を表現するのに、荊軻の心になぞらえた。(陳舜臣 荊軻、一片の心 同書、p79-80)

 荊軻の「一片の心」は、いつまでも中国人の心のなかに残っている。
 陶淵明が荊軻をうたった詩は、
 
 惜しいかな、剣術疎(そ)にして
 奇功、遂に成らず
 その人 已に歿すと雖も
 千載に余情あり

と結ばれている。(陳舜臣 同書、p84)

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注:荊軻(けい か ? – 紀元前227年)

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