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司馬遷が客の世界に問いかけた運命の問題は、士の世界の問題でもあった

2016年3月31日 木曜日 午後は晴れ 暖かい

白川静 中国古代の文学(二)史記から陶淵明へ 中公文庫 1981年(初出は1976年)

司馬遷が提出した運命の問題

運命の問題が直接に問われるのは、権力機構と社会秩序とがなお不安定な状態にあった時期においてであるが、それはだいたいにおいて、司馬遷の時期を境として前後の二期に分かたれる。すなわち古代共同体が最終的に崩壊した戦国期から秦漢期と、孝廉選挙の法によって、士人がその地域社会を基盤として、政治に参与する機会をえた漢魏以後とである。前者を客の時代、後者を士の時代とすることができよう。司馬遷はあたかもその分岐点に立つ人である。かれが客の世界に問いかけた運命の問題は、したがってまた士の世界の問題でもあった。(白川、同書、p414)

司馬遷がこのような(侠客の)徒に対して、特に強い親近感を示しているのは、彼自身のうちに、なお客的意識が強かったからであろう。かれは・・侠は盗の後裔であるとする。また権力者に対しては、「国を窃むものは侯となる。侯の門に仁義存す」と「荘子」・・の語を引き、王侯をも本質的には盗と同じものとし、絶対のものとしない立場をとっている。かれ自身、なお客であったのである。(白川、同書、p416)

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