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常世に至り 海神の 妙なる殿に 携はり 老いもせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを

2021年2月23日 火曜日 祝日 晴れ

上野誠 万葉集講義 最古の歌集の素顔 中公新書2608 2020年

高橋虫麻呂の「水江(みずのえ)の浦の島子を詠んだ歌」(万葉集・巻九の一七四〇、一七四一)

春の日の 霞める時に 墨吉(すみのえ)の 岸に出で居て 釣り舟の とをらふ見れば いにしへの ことそ思ほゆる みづのえの 浦の島子が 鰹(かつを)釣り 鯛(たひ)釣り誇り 七日まで 家にも来ずて 海界(うなさか)を 過ぎて漕ぎ行くに 海神(わたつみ)の 神の娘子(をとめ)に たまさかに い漕ぎ向かひ 相(あひ)とぶらひ 言なりしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内の重(へ)の 妙(たへ)なる殿に 携はり 二人入り居て 老いもせず 死にもせずして 永き世に ありけるものを 世の中の 愚か人の 我妹子(わぎもこ)に 告(の)りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も語らひ 明日のごと 我は来なむと 言ひければ 妹が言へらく ・・・以下略・・・(上野、同書、p160)

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反歌

常世辺(とこよへ)に 住むべきものを 剣大刀(つるぎたち) 汝(な)が心から おそやこの君 (万葉集・巻九の一七四一)

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