2021年2月22日 月曜日 曇りのち雪
上野誠 万葉集講義 最古の歌集の素顔 中公新書2608 2020年
律令官人の理想
律令官人としてその生を全うするということは、高い倫理観を持ち、矜持を持って生きるということであった。しかし、また一方で、その人生を「悲哀」とともに生きてゆくということでもあった。つまり、「矜持」と「悲哀」の間に、ホンネとタテマエが入り混じるのである。(上野、同書、p81-82)
山上臣憶良、沈痾(ぢんあ)の時の歌一首(巻六の九七八)
士(をのこ)やも 空しくあるべき 万代(よろづよ)に 語り継ぐべき 名は立てずして
・・律令官人として、高い理想を求めつつも、遠くそれに及ばないまま死んでゆく悲しみを歌った歌である。・・憶良は歌う。私はまだ語り伝えられるような仕事もしていないし、人格者にもなっていない。なのに、もう死は近いのだ。
高い理想は、かえって人生に悲嘆と無念をもたらすものなのである。(上野、同書、p83-84)
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