2016年1月6日 水曜日
太宰治 走れメロス 太宰治大全 アマゾンkindle版
メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮らして行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。(太宰治 走れメロス 太宰治大全 アマゾンkindle版位置No.20327)
おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。(同書、位置No.20335)
正義だの、信実だの、愛だの考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも勝手にするがよい。やんぬる哉(かな)。ーーー四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。(同書、位置No.20406-13)
私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ!メロス。(同書、位置No.20422)
それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。(同書、位置No.20444)
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(古伝説と、シルレルの詩から。)
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ウィキペディアによると・・・ https://ja.wikipedia.org/wiki/走れメロス より<以下引用>
初出『新潮』1940年5月号 単行本『女の決闘』(河出書房、1940年6月15日) 執筆時期 1940年3月23、24日までに完成(推定) 原稿用紙 26枚
作品の最後に「古伝説とシルレルの詩から」と記述され、ギリシア神話のエピソードとドイツの「シルレル」、すなわちフリードリヒ・フォン・シラー(Friedrich von Schiller)の詩をもとに創作した事が明らかにされている。
古伝説すなわちギリシャ神話について論じているのは杉田英明『葡萄樹の見える回廊』(岩波書店 2002年11月 ISBN 9784000246163)で、明治初期にも翻案があったと記されている。
また、シラーの詩については、最近の研究で、小栗孝則(20世紀前半の独文学者)が1937年(昭和12年)7月にシラーのバラード Die Bürgschaft の初版を訳した「人質」(『新編シラー詩抄』改造文庫)とされている。「内面的動機」は檀一雄との間に起きた昭和11年(1936年)の「熱海」事件ではないかという説もある。<以上、引用終わり>
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補註211213追記
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