2023年3月22日 水曜日 晴れ
山本周五郎 季節のない街 新潮文庫 昭和45年(オリジナルは恐らく昭和37年)
・・そうじゃないんだよ、あれは自分のためじゃない、おっかさんや弟たちといっしょに、もう少しましなところへ移りたかったんだ。それでも考え直して、あにきに遣ろうと思ってうちへ帰ったんだ。ぼくは自分だけのためなんて、考えたこともありゃあしないよ、辰也は心の中でそう訴えた。しかしそれは心の中のことで、口にはひと言も出さなかった。(山本周五郎、親おもい、同書、p88)
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・・「なんみょうれんぎょう」彼は合掌し、あたかも仏壇の中におそっさま自身がいるかのような、純粋なしたしみと、信念のこもった表情で呼びかける、「ーーどうかまいどのことでうるさいかもしれないが、どうかかあちゃんの頭がしっかりするように、「よろしくお願いいたします、なんみょうれんぎょう」(山本周五郎、街へゆく電車、同書、p21-22)
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補註: 黒澤明監督の「どですかでん」(1970年公開、140分)の原作はこの「季節のない街」である。左大臣光永さんがお話しになっていたのでこの映画のことを知った。音楽は武満徹。
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