philosophy

哲学や思想は、人々が抱く「幸福への関心」との間に絶えず開かれた接触を維持するものでなくてはならない。

2023年4月1日 土曜日 曇り時々小雨(暖かかったり、寒かったり)

 ・・思想的な物書きとしてのキャリアをそこそこ積んできてこの年齢に達すると、自分がやってきたことが何ほどのものなのかという疑問と不安にとらえられることが多い。思想なんてしょせんごく一部の人間の自己満足にすぎないのではないかーーそういう観念がいつも背後に貼りついているのを振り払うことができないのだ。

 大衆社会の実現と実証科学の隆盛によって、哲学や思想がもつ原理的な役割と意味は、いま死に瀕しているといっても過言ではない。だがほんとうにそうなのだろうか。この現在時点で、何とかその役割と意味とを救い出すことはできないものであろうか。

 これに対してとりあえず著者が出した答えは、哲学や思想はあらゆる人々が抱く「幸福への関心」との間に絶えず開かれた接触を維持するものでなくてはならないということである。それは、哲学や思想の営みの根本の動機を、広い意味での「倫理」的関心に狙い定めることと同じである。そのことがうまくなされれば、哲学や思想は依然として役に立つのだ。(小浜逸郎、「人はなぜ死ななければならないのか」p4-5、洋泉社、2007年)

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