literature & arts

ノーサンガー僧院(2)

2017年3月1日 水曜日 曇り

補註 ノーサンガー僧院ーーーオーディオブックを本日で聴了。キャサリンに対するティルニー将軍(ヘンリの父)の態度の急変の謎に関して、最後の一章で簡潔明瞭に謎解きされていた。全体のプロットとしては、単純ではあるものの、すっきりと良くまとまっていて楽しめる小説に仕上がっている。
 ところで、この将軍のような俗な父を持つのは、息子にとっては迷惑なことである。それでも親子関係の断絶というような形に陥らず、まあこんなこともよくあることだ、といった感じで(表面上)スムーズに話が進められているのは、さすがのオースティン流である。キャサリンに3000ポンドという持参金が付いたことも、全体をハッピーエンドに終わらせるためのご褒美になっている。「分別と多感」の主人公エレナーとマリアンの持参金がそれぞれ1000ポンドずつであったことを考えると、キャサリンの3000ポンドは、将軍にとってもまずまず納得のいく額面ではなかろうか。(年利7%として計算してみると、年に210ポンド程度の不労所得である。) それにしても、すでにリッチな次男、そのお嫁さんとして持参金のやや少な目の娘がやってきたところで、将軍パパにどれだけか苦労をかけるというわけでもあるまい。素直で気立てがよくて、発展性を備えた教養があり、その上に見目麗しいのであるから、持参金不足に文句を言うべき筋合いはない。それなのに、手のひらを返すような変化ワザの冷たい仕打ちーーーまことに俗な父であり、息子の視点から見ても、嘆かわしく恥ずかしいことである。思わずイギリス紳士を非難したい気持ちに傾くが、私のごくごく身近にもこのような父を見出すのであり、日英共通・ありふれた、あらま欲しからざる父親像である。

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Jane Austen, Northanger Abbey, first published 1818, published in Penguin Classics, 1995, this edition reissued with new Chronology and updated Further Reading 2003.

オーディオブック: Classic Literature Audiobooks
Jane Austen, Northanger Abbey, performed by Anna Massey, 1989, 2008 BBC Audiobooks, Ltd., published by Brilliance Audio. 7 CDs, 7:44

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