literature & arts

後期万葉論

2016年4月1日 金曜日 曇り

白川静 後期万葉論 中央公論社 1995年

最古の剣銘
この当時(倭王武・雄略期)、鋳剣などのことに従う者はみな異邦の渡来者であった。(白川、同書、p85)

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人麻呂の古体表記のもののうちに、渡来者との交渉を思わせるものが多いこと
(人麻呂の)作品に、たとえば七夕歌や旋頭歌など、古体表記のもののうちに、渡来者との交渉を思わせるものが多いことからいえば、この時期における文学的景況は、むしろ渡来者によってもたらされた地盤の上に、生まれたものではないかと思う。・・・(中略)・・・あの七夕歌の群作は、中国の典籍の中から生まれてきたものではなく、民俗的な大衆の行事の中から、その共有する意識や感情のもとに、生まれてきたものと思う。その民俗を伝え、地域社会の中でそれを演出してみせたのは、渡来者の集団であったとみてよい。・・比較文学的立場から、このように半島文化を基盤とする文化活動のなされている時期を、私は「万葉」の初期とし、万葉的なものの成立期・完成期とするのである。そしてその時期を代表するものが、人麻呂であった。(白川、同書、p130-131)

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