culture & history

社会的理由による改変

バート・D. アーマン 松田和也訳 書き換えられた聖書 筑摩学芸文庫 2019年(原著は Bart D. Ehrman, Misquoting Jesus, The story behind who changed the Bible and why., Harper Collins Publishers, 2005. )

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女性と聖書テキスト:

・・ほとんどの場合、テキストの改竄は女性の役割を限定し、キリスト教運動におけるその重要さを最小化する方向へと働いた。(アーマン、同訳書、p297)

『コリントの信徒への手紙一』の14章・・問題の節(34-35節)は現存する重要な写本の中で一所に落ち着かず、あちこちウロウロしている。・・パウロはもともとこの節を書いていないという推定には十分な根拠がある。・・この節は14章のコンテクストから見て邪魔であるだけではなく、パウロが『コリントの信徒への手紙一』の他の部分で明瞭に述べていることとも矛盾している。(アーマン、同訳書、p298-299)

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反ユダヤ主義による改竄:

・・『ルカ』の磔刑(たっけい)の描写だ。・・・(中略)・・・イエスの赦しの祈りは『ルカ』23章のオリジナルである・・・・・(中略)・・・では、「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」とイエスが祈ったというテキストに対して、書記としてはどうすればいいのか? この問題に対して、彼らは単純にテキストを削除した。イエスはもはや、彼らが赦されるようになんて祈ってない。(同訳書、p312〜314)

・・ここでもまた、書記に改変を促したのは反ユダヤ主義的傾向である疑いが濃厚だ。(アーマン、同訳書、p315)

・・なぜそれが合法であるかを知らずに行う者だけが、悪事を為しているというわけだ。これもまた、初期教会に反ユダヤ主義の台頭が起こっていたことを示す異文だろう。(同訳書、p316)

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異教徒と聖書:

・・実際、最初の二世紀の間、キリスト教徒に対する異教徒の迫害は、ローマによる組織的な公式の迫害というより、草の根レベルで起こるものだった。・・キリスト教自体には、当時においても何ら違法性はなかったのだ。キリスト教は別に非合法な宗教というわけではなかったし、キリスト教徒も地下に潜伏したりする必要はなかった。・・なのに、キリスト教徒はときおり迫害を受けた。それはなぜ? (アーマン、同訳書、p318)

・・二世紀の終わり近くになると、著述家の中にも、実際にキリスト教文書を読んで論理を構築する者も出てきた。異教徒の批評家ケルソスは、キリスト教の信仰を批判する根拠として・・・・・以下略・・・(同、p321)

・・キリスト教側からの反論:・・知識人がキリスト教に改宗し始めると、つまり二世紀半ば以後、数多くの合理的な弁論、つまり護教論が、キリスト教徒の筆から生み出されるようになったのだ。(同、p323)

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