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機を見て積極的の方策を構じ・・てはならなかった・・。

2022年12月31日 土曜日 曇り・静かな夜

林千勝 日米開戦 陸軍の勝算ーーー「秋丸機関」の最終報告書 祥伝社新書429 2015年

「今後採るべき戦争指導の大綱」(昭和十七年三月七日第九十二回大本営政府連絡会議決定)

 ・・この「今後採るべき戦争指導の大綱」(以下では「大綱」)で特筆すべきは、いや、驚愕すべきは、「一」において「機を見て積極的の方策を構ず」の文言が記載されたことです。この文言は大東亜戦争における日本の勝利のためには、決して記載されてはならない代物でした。(林、同書、p174)

 ・・陸軍は、攻勢の限界を超えることを恐れました。陸軍は、ジャワ占領によって第一段の戦略目標は達成されたので、おおむねその線で長期持久態勢を固め、連合艦隊の主力をインド洋に指向し、インド脱落、西亜(ペルシャ、イラク、アラビア方面)打通に資する作戦のみにすべきと主張しました。(林、同書、p178)

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 乾坤一擲ドゥーリトル空襲(昭和十七年四月十八日)と、ミッドウェー海戦の大敗北(林、同書、p181〜)

 ・・日本の西進を止めることを狙った米国の乾坤一擲の陽動作戦・ドゥーリトル空襲に、山本五十六連合艦隊司令長官は予定通り誘い出され、陸海軍をして東の太平洋に向かわせてしまったのです。そして、あのミッドウェー海戦の大敗北を招きました。(同、p181-182)

 ・・この日本本土空襲での投下爆弾は三十、投下焼夷弾は千四百六十五。日本国民はこの時米軍機からの無差別攻撃を受け、死者は子供を含む八十七名、重軽傷者四百六十六名、家屋三百五十戸の被害を出しました。加えて、監視艇被害等で十三隻、死者四十四人を出しています。(同書、p183)

 ・・ドゥーリトル空襲により、今後の空襲を防ぐためにはミッドウェー島占領が必要だという山本五十六連合艦隊司令長官の説明に説得力が増してしまいました。山本五十六連合艦隊司令長官は、乾坤一擲のドゥーリトル空襲に込められたアメリカ側の意図にまったく思いを致そうとはしませんでした。(同書、p184)

 ・・結局ドゥーリトル空襲が影響して、「腹案」を無視したミッドウェー作戦が六月四日に正式に実施となったのです。(同書、p186)

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 ・・ガダルカナル敗戦(昭和十七年八月)

 ・・ここに、インド洋作戦を始めとする西進戦略はすべて崩壊、日本の戦争戦略は完全に破綻したのでした。山本五十六連合艦隊司令長官らによる戦争戦略からの逸脱が、わが国をそもそも意図せざる太平洋戦争という地獄へと転落させ、大東亜戦争を遂行不能に陥れたということです。(同書、p189)

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