2024年7月28日 日曜日 (朝は)強い雨
チェーホフ 浦雅春訳 ワーニャ伯父さん/三人姉妹 光文社古典新訳文庫 2009年
・・チェブトゥイキンン: ええ・・そういうことです・・私はもうへとへとだ、精根つきはてました。これ以上話す気にもなれん・・。(忌々しそうに)それにしても、どうでもいいさ! (チェーホフ、三人姉妹、同訳書、p306)
**
・・マーシャ: ああ、音楽が鳴っている! あの人たち、あたしたちを置いてみんな発っていくんだわ。ひとりはすでに永遠(とわ)の世界に旅立ち、二度と戻っては来ない。あたしたちだけが残されて、新たに生活をはじめるのね。生きていかなくてはならないのね・・生きていかなくては・・。
イリーナ: (オリガの胸に頭をあずけて)やがて時が来れば、どうしてこんなことになったのか、なんのために苦しんできたのか、それが分かる日がって来る。そうなれば、わけの分からない秘密も何もなくなってしまうんだわ。でも、それまで生きていかなくてはいけないのね・・。働かなくてはいけないのね。必要なのは、ひたすら働くことだけ! あした、私はひとりでここを出ていく。学校で教えて、私を必要とする人たちのために私の生涯を捧げるわ。今は秋、やがて冬がやって来て、雪にすっぽりくるまれてしまうけれど、私、働くわ、ずっと働きつづけるわ・・。
オリガ: (二人の妹を抱きしめて)音楽があんなに愉しそうに、力強く鳴りひびいている。それを聞いていると、つくづく生きていたいと思う! ああ、神様! 時が経って私たちが永久にこの世をあとにすれば、私たちのことは忘れ去られてしまう。私たちの顔や声や、私たちが何人の姉妹だったかも忘れられてしまうんだわ。でも私たちが味わったこの苦しみは、私たちのあとから生まれてくる人たちの歓びに変わっていき、やがてこの地上に幸せと平安が訪れるの。そのときには人々は今生きている私たちのことを感謝をこめて思い出し、きっと祝福してくださるわ。(チェーホフ、三人姉妹、同訳書、p307)
**
*****
*********************************