culture & history

石油文明: 石油で熱して、水で冷やす文明

2019年10月6日

槌田敦 資源物理学入門 NHKブックス 昭和57年(=1982年)


石油文明とは、見方を変えると、石油で熱して、水で冷やす文明である。もっと正確にいうとすれば、石油の拡散能力を用いて、種々の活動をし、その廃物と廃熱を拡散される空間としての水に吸収させて捨てる文明である。したがって、捨て場の枯渇の問題には、捨てる手段としての水の枯渇の問題になっていくことを理解する必要がある。(槌田、同書、p104)

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遠距離輸送

消費地の汚染は、物を運んできたことによる直接的な汚染だけではない。その消費地に生活する人々とその農地との関係は、ずたずたに切り離されてしまうため、土地の能力はどんどん低下し、作物のみのらない土地になり、ついには砂漠になってしまう。

その例として、古代ギリシャをあげることができる。ギリシャの場合、ありあまる食糧の輸入によって、ギリシャ農業は食糧を生産せず、オリーブだとかぶどう酒だとかの付加価値の高いものばかりを生産した。その結果、自らの農地を破壊したのである。ギリシャの土地がいかに破壊されたかについては、プラトンが「クリティアス」という本の中に書いている。つまり、昔のギリシャは豊かな農地があった。しかし、当時の(つまり二三〇〇年前の)ギリシャでは、すでに保水力の失われた病人の骨だというのである。(槌田、同書、p108)

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補註 『クリティアス』(: Κριτίας、: Critias)は、プラトンの後期対話篇の1つであり、『ティマイオス』の続編。未完。副題は「アトランティスの物語」。(ウィキペディアより)

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・・このように細分化された科学をいくらよせ集めても、学問というわけにはいかない。学問とは、これらの細分化された科学の中にある普遍的論理だからである。ところで、この自然や社会の中にある普遍的論理を何とみるか。ここには、帰納的飛躍、つまり直感が必要となる。それは、流れである。・・・(中略)・・・この流れこそ、現実的存在としての自然であるという見方によって、自然と社会を考えることにしよう。(槌田、同書、p128)

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・・石油は、人間にとって最良の資源であった。最良であるということは、最強の資源でもある。地球が小さいと感じるのは、この石油の能力が人間にそういう気持ちを起こさせたのである。

 ところで、・・地球はエントロピーを処分する巧妙な能力を持っている。生物循環は物エントロピーを処分し、熱エントロピーに変える。そして水循環は熱エントロピーを宇宙に捨てる。このエントロピー処分の巧妙な能力のある開放系の世界は天動の世界である。しっかりと大地に足をつけた世界である。

 さて、地球が宇宙船でなく、生物にとってすばらしい環境であるもうひとつの点は、流れの系が脈動していることである。第一には、一日二四時間で昼夜のあることであり、第二には地球の回転軸が太陽に対して、23.5度傾いて四季をつくっていることである。(槌田、同書、p192)


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