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共産主義や社会主義の失敗

2016年7月22日 金曜日 曇りのち晴れ

筧次郎 ことばのニルヴァーナ 歎異抄を信解する 邯鄲アートサービス刊 2004年

武藤洋二 紅葉する老年 旅人木喰から家出人トルストイまで みすず書房 2015年

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共産主義や社会主義の失敗
私は一番の原因は、理想の社会に近づくために最も大事なのは人間の精神の変化なのに、社会の制度を変えれば実現できると考えてしまったことだと思います。人間はいつでも自分中心にものを見て、私利私欲にもとづいて行動するものだと言うことを忘れていたのです。・・・(中略)・・・ 誤解のないように付言しますが、社会主義の失敗は、私たちの社会つまり資本主義の成功ではありません。資本主義というのは、一言で言えば「共産主義のような理想もなく、私たちの我欲を解放して競い合い、闘い合う」社会です。エゴイズムを原動力にして発展してきた社会です。その結果、力の強い国はかつてないほど豊かになりましたが、一方では何十億もの人々が、富と労働を奪われて苦しんでいます。環境破壊や地下資源の枯渇によって子孫に苦しみのツケが回ることも明らかです。これを成功と思うのは、「あまりにもものが見えない」と言わなければなりません。 それではどうしたらよいのでしょうか。 「念仏して、急ぎ仏になりて、大慈大悲心をもって、思うがごとく衆生を利益するべし」というのが、親鸞聖人の答えです。つまり阿弥陀さまの信方便に乗じて真実を悟り、本当の慈悲心を得るほかはない。私たち人間は自分本位という色眼鏡を掛けている。人間である限り理想の社会など実現しない、と言っているのです。(筧、ことばのニルヴァーナ、p82-83)

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トルストイの土地私有反対を権力否定と切り離せば、・・・(2016年7月29日追記)
ここでは土地は、「全人民の所有」という形式で、国家権力による独占的排他的所有になる。これによって国家権力は、史上最も多くの領域で最も強い支配力を発揮できた。国家は唯一人の地主だから土地だけでなく、その上に住む者、全人民の運命を好き勝手に扱うことができる。所有は権力にとって最高の支配携帯であり、民衆は土地と共に自由をそっくり奪われる。したがってトルストイの土地私有反対を権力否定と切り離せば、彼が長年主張し続けた自由、寛容、国家への服従拒否、処刑と暴力と強制の廃止などは消えてしまい、土地私有制廃止が土地国有制という鬼子、絶対的権力支配を生みだす。処刑、暴力、強制、国家権力の否定否認のこのつらなり、この輪の中でこそトルストイの土地私有反対が意味をもつ。(武藤洋二 紅葉する老年 旅人木喰から家出人トルストイまで みすず書房 2015年、p242)

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