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CHONSの化学:電子対の流れと軌道の符号

2016年11月1日 火曜日 曇り

秋葉欣哉 なっとくする有機化学 講談社 2003年

硫黄(S)を、リン、硫黄、金属元素の代表とすれば、CHONSの科学が動植物を扱う学問といえる。したがって、動植物の生命力によってつくられる物質である有機物(organic substance)を扱う化学が有機化学であると、長い間考えられてきた。これを化学の立場、すなわち原子、分子を基盤として扱うのが、CHONSの化学である。(秋葉、同書、p15)・・したがって21世紀では、「有機化学はCHONSの化学である」と言い換えるべきである。(同、p17)

「電子対の流れ」と「軌道の符号」でなっとくしよう!
・・電子対の流れに注目すれば、有機反応の基本が理解されるはずである。それに各化合物の形をふくめた立体的な要素を加味すれば、さらに生き生きしたイメージになるだろう。
・・結合は2つの原子の軌道が重なってできており、各原子の軌道には符号(+,ー)があると、量子力学が言っている。この「軌道の符号」によって反応が支配されることがある。
ーーーすなわち、「電子対の流れ」と「軌道の符号」に注意すれば、有機反応が生き生きしたイメージになるのだ。(秋葉、同書、p19より抄)

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1s軌道
1sのsはsharpのs。量子力学的にいうと、1s軌道にいる電子の電子密度をグラフ化したものは1s軌道の中心付近でsharpな形になる。(p23の脚注)

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パウリの排他原理
排他とはようするに、電子同士は、スピンまで考えると、同じ状態を取ることはできないということ。(p24)

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炭素原子
2個の電子の2p軌道への入り方は、
(i)   1個の軌道にスピンを逆にして入る
(ii)   別々の軌道にスピンを逆にして入る
(iii)  別々の軌道にスピンを平行にして入る
の3通りがある。このうち、別々の軌道にスピンを同じ向きにして入る配置である(iii)が最もエネルギーが低く、安定である。これをフントの規則という。・・この2s軌道と3つの2p軌道に入った電子が、有機化学のさまざまな反応の根幹となっている。(p25)

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軌道を占有する電子の数の分布状態を原子の電子配置 (electronic configuration) という。(p26)

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s軌道とp軌道に電子が2個ずつ入り、価電子が8個になると安定な電子配置となる。これをルイスのオクテット則という。(p27)

s軌道とp軌道の形と符号
軌道というのは電子の存在する確率の高いところを線で描いたものであり、符号は電子の波動関数の符合である。(p28)

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鏡像体
・・このように鏡に写した像(鏡像体)が重なり合わない場合、それらを鏡像異性体(enantiomer:エナンチオマー)といい、この現象を鏡像異性(enantiomerism)という。enantios はギリシャ語で、反対(opposite)を意味する。 鏡像異性体として存在する分子をキラルな分子(chiral molecule)、その中心の炭素をキラルな炭素(chiral carbon)あるいは不斉炭素(asymmetric carbon)という。キラルもギリシャ語の手(cheir)から派生している。なぜなら、右手と左手は鏡に写した像になっており、重ね合わすことができないからである。(p42)・・差があるのはただ一点、平面偏光を右に回すか左に回すかということである。これを旋光性という。(p42)・・鏡像異性体は光に対する性質についてだけその差を現すので、光学異性体(optical isomer)とか光学活性(optically active)とかいうこともある。(p43)

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鏡像体の関係にない異性体をジアステレオマー(diastereomer)という。・・ちなみにジアステレオマーは距離異性体と訳されることもあるが、普通はそのままジアステレオマーという。ジアはギリシャ語の距離(dia)に由来する。(p49)

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二重結合の立体化学
二重結合の各炭素に結合している2つの置換基に順位則に従って1,2と番号をつける。番号の高い置換基が二重結合の同じ側にあるものをZ(zusammmen)体、反対側にあるものをE体(entgegen)という。(p49-50)

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