2022年1月4日 火曜日 晴れときどきしっかりと雪降り
神野正史 「移民」で読み解く世界史 イースト・プレス 2019年
以下のページもご覧ください(古代エジプト・アクエンアテンの宗教改革 2015年6月10日付け)
・・歴史学的にはアメンホテプ4世の方が圧倒的に重要です。
・・国が栄えれば栄えるほどすべては「神=アモンの御加護のおかげ」とされ、神官(=ヘムネチェル)の発言権が王(ファラオ)すら凌駕しはじめたことです。(原注$$)
・・彼ら神官が我がもの顔に振る舞えるのは、神アモンを騙っているからです。
ならば・・王ファラオが神官を兼位すればよい(原注#)。
しかし、「アモン神の声を聴くことができるのは神官だけ」という伝統があったため「アモン神」ではダメです。
そこでアメンホテプ4世は、当時マイナーだった「アトン神」という神を引っぱり出し、
・・アトン神の声を聴くことができるのは王(ファラオ)だけである!
しかし、これだけでは「アモン神官」と「アトン神官(王)」の中傷合戦が始まるだけですから、もう一押し必要です。
ーー神(アトン)はおっしゃった!
我の他に神はなし!
我こそが唯一の神なり!
こうすれば、アモン神は“偽神”となり、それを掲げる神官は「ペテン師」ということで排斥することができます。
じつは、このように純粋に政治的事情で人工的に作られた「アトン教」こそ、人類史上初の一神教です。 これ以前に人類が作りあげた無数の宗教の中に一神教はひとつたりとも存在しませんでしたし、しかも、この特異な宗教「アトン教」がエジプトに存在していたのは、後にも先にもこの王ファラオの御世(みよ)10年のみ!
イクンアトン王(原注@@)が亡くなるや、猛反発していたアモン神官たちがただちにこの王ファラオの名を王名表から消し、「アメンホテプ4世というファラオ自体が最初から存在しなかった」ことにされ、ファラオとアトン教の存在はエジプトの歴史から徹底的に抹殺されてしまいます。
こうして“突然変異”のようにして生まれた「一神教=モノシイズム」は人類史から跡形もなく消え、ふたたび“ポリシイズムしか存在しない世界”へと戻っていく・・はずでした。(神野、同書、p37-38)
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原注## 実際、彼の次王ツタンカーメンの大神官アイが王位を簒奪しています。
原注# ヨーロッパでも、ビザンツ帝が「皇帝教皇主義」、英王が「国王至上法」を発するなど、王権と教権を兼位することでローマ教皇の権威に対抗しようとしていますが、これと同じです。
原注@@ アメンホテプ4世は宗教改革後、「アメンホテプ(アモン神が満足する者)」から「イクンアトン(アトン神に愛される者)」に改名しました。(以上、原注、p37、p39)
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