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小浜逸郎『ざわめきとささやきーー2018年ふたりの秋−−』その2

2023年2月3日 金曜日 晴れや曇り時々雪(北海道の冬らしい天気)

小浜逸郎『ざわめきとささやきーー2018年ふたりの秋−−』その2

https://novel.daysneo.com/works/episode/f67e08d699c6292e0e303327aed37b06.html

より、<以下引用>

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フルニエのチェロ協奏曲(ドヴォルザーク)リマスター版を聴きながら

Cello : Pierre Fournier; Conductor : George Szell; Berliner Philharmoniker; Recorded in 1962; New mastering in 2022 by AB for CMRR.

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<以下、小浜、同ウェブ小説から、引用> 

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オフィスのスタッフたち――能力や適性にいろいろ差はあっても、・・営業所がうまく運営されていくように、懸命に働いてくれる。

もちろん、働くのは、自分たちが食べていくためだ。しかし人はただ欲得のために働くわけではない。彼らが働いている姿をこの目でじかに見ていると、それは欲得ずくを超えた何かのためであることがよく実感できる。

その何かとはなんだろうか。社会奉仕でもなく、かといって枠組みに仕方なく服従する気持ちでもない。そこには、もっと根源的な欲求のようなものがある。それはおそらく、人と人とが、直接につながり合い、認め合いたいという欲求だろう。

しかし、そういう一番大切なものによってこそ社会が支えられるはずなのに、その当の社会のからくりが、直接的なつながりや認め合いの欲求を、しばしば理不尽に断ち切ろうとする。そこには、そうさせてしまう構造のようなものが必ずあるはずだ。

それを《敵》と呼んでもいいと思う。

・・・(中略)・・・

この複雑化して機能が膨大に分化した社会では、一定の《敵》を特定することはできても、そこに切り込む効果的な武器をなかなか用意できない。

みんながそれぞれ忙しく毎日を送っていて、自分たちがその《敵》に囲まれていることを意識できないからだ。誰がそれを意識させられるのだろう。政治家? 学者? マスコミ? どれも違うような気がする。こうした権威筋には失望させられることがあまりに多かった。

・・・(中略)・・・

 ・・期待を持たせて代わった阿川政権(補註#)のグローバル政策と緊縮財政によるデフレの継続と国民の貧困化――そしてこれはいまも続いている。

・・・(中略)・・・

《敵》をだれにとってもきちんと意識させられるもの、それはおそらく、《思想》とでも呼ぶしかないものだろう。私たち一人一人が日々の暮らしを生きる中で、そこで感じ取られた実感を基盤にたしかな言葉へと統合していく。その果てに現れる優れた《思想》(補註##)。

それが編まれるためには、まだまだ一定の過酷さが私たちにのしかかることが必要とされるのかもしれない。

でも、よく見れば、その過酷さはもうのしかかってきているのだ。そのことをみんなにはっきりと気づかせるために、すでに何人かの人たちが登場している気配もある。この人たちが、小異を捨てて結集することを願わずにはいられない……。

https://novel.daysneo.com/works/episode/f67e08d699c6292e0e303327aed37b06.html

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補註# 第2次安倍内閣を指している。「日本を取り戻す」として始まり挫折させられた第1次安倍内閣から大幅に後退した。外交問題評議会(D. ロックフェラーの肖像のもと)で忌憚の無いご意見を伺って帰って来た。第2次安倍内閣以降、グローバル政策と緊縮財政によるデフレの継続と国民の貧困化はますます進められた。これは、安倍さん個人が悪いとか弱いとかいう問題ではなく、林千勝さんが縷縷述べられているように「マネー主義」による世界支配の権力構造上の問題である。しかも、そのグローバル政策を強力に推し進めた安倍さんでさえ、昨年・令和4年7月8日、兇弾に倒された。安倍元首相暗殺の一事をとっただけでも、私たちを取り囲んでいるその《敵》の闇は深い。そして強い。私たち日本人はトップに立つ政治家一人さえ守ることができない。そしてその暗殺という犯罪の真相(どのようにして”How?”、なぜ”Why?”)を解明することさえ許されていない構造の支配下にいるのである。

補註## 優れた思想家としての小浜さん・・私は親しみを持って尊敬しています。著作を通して、これからも多くを学びたいと思います。

補註: 小説家としての小浜さん・・素敵ですよ。小浜さんが(恐らく)伝えたかったことが、読者に素直に伝わって来ます。

 そして、蛇足(〜冗談)ですが、ラゴージン(白痴)やミーチャ(カラマーゾフ)のような強烈な人物造型、親父に殺されそうになるまで打ちのめされたり(ラゴージン)、逆に親父を殴り倒して踵で顔を踏みつけにして殺しそうになったり(ミーチャ)、といった激しい人物たちが爆発する極限場面・・そのような人物と出来事が小浜さんの小説の中で一度も無いのは・・それはそれで日本人の一読者として幸せな生まれ付きと感じております。(補註終わり)

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シューベルト ピアノソナタ 第21番 変ロ長調 D.960 ホロヴィッツ Schubert Piano Sonata in B Flat Major

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