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仕事で出会ったいろいろな人や出来事と地続きの問題について考えたことを書いているつもりです: 小浜逸郎「ざわめきとささやき――2018年ふたりの秋――」その1

2023年2月2日 木曜日 曇り時に陽射し

小浜さんのネット小説「ざわめきとささやき――2018年ふたりの秋――」を読む。

https://novel.daysneo.com/works/episode/3b7d11ebaced07a63142df531fc91af0.html

・・「漁場といえば、釧路なんかもう危ないですよ。港の周りに中国系企業がひしめいてるからね。あそこは北海航路の拠点にしようってんで狙われてるんだ。そういう事態に対して政府も北海道庁も、何ら対策を講じようとしない。幕末のころ、ペリーが来たでしょ。あんときは幕府の官僚が頑張って、外国人の国内移動距離を港中心に半径何キロ以内ってちゃんと決めたんだよ。そのころ中国では西洋人が国内を勝手に歩き回ってたからね。その中国が今度は、北海道をはじめとした日本の不動産を買いあさってるんだ。あのころの日本の気概はどこに行っちゃったのかね」

鎖国を解いて国を開こうという時代と今とでは比較にならないだろうと思ったが、それにしても、こんなに自分からグローバリズムを受け入れてしまうのは日本人の気概が失われたからだという篠原の意見には賛成だった。

私が黙っていると、アキちゃんが言った。

「なんか、戦争しないで平和でいいって思ってたら、いつの間にか土地は取られてるし、移民はどんどん入ってくるし、怖いですね」 

「そ! アキちゃんとやら、いいこと言った。ドンパチだけが戦争じゃないんだ。これからの戦争は、サイレント・インヴェージョン、つまり静かな侵略といってね、経済戦、情報戦、歴史戦の時代なんだよ。不動産爆買いは経済戦の一種だな。だからもう戦争は始まってるんだよ」

マスターが言った。

「でもそれに対して政府は何にもしようとしないんですよね、負けっぱなしのままですか。日本は滅びちゃうじゃないですか」

https://novel.daysneo.com/works/episode/3b7d11ebaced07a63142df531fc91af0.html

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https://novel.daysneo.com/works/episode/90fef016f7c4a8bb17adaaf101741248.html  「まず国債は100%円建て、つまり自国通貨建てなんだよ。政府の負債がいくら積み上がったって、政府は通貨発行権を持ってるよね。だから負債の分だけ円を刷りゃあいいんだから、原則的には返せないってことはありえない。だから財政破綻なんて起こりようがないんだよ。ほんとは刷る必要もないんだけど、それはまあ、あとの話として……」

https://novel.daysneo.com/works/episode/6ca848bb2d0e74aaf73397f518d2c17b.html  「そう。・・政権はとんでもないことやってるんだよ。消費増税は国民生活を苦しめるだけじゃない。グローバル企業の法人税を減税する肩代わりにも使われてるんだ。これやったら日本経済はもうダメだ」

「要するにグローバルなほうに資本が全部向いちゃってるわけだな」

「そう。これはやばいよ。日本のGDPは消費が6割だから、資本を外に逃がして内需が落ち込んでいくと致命的だ」

「もう一つ聞きたいんだけど、もし国家予算が国債や財務省の短期予算で賄えるなら、わざわざ国民から税を取り立てる必要ってなくなるんじゃないか」

「いわゆる無税国家論な。理念としては可能だけど、現実にそれをやると、インフレの過熱を抑えるのが難しくなる。それと富裕層からたくさん取って社会保障などで貧困層に回すという、いわゆる所得の再分配機能が税にはあるからな。だから本来、消費税みたいな、貧乏人に負担がかかる税は、デフレ期には絶対やっちゃいけないんだ」

「なるほど。インフレ抑制のためと、格差是正のために税はあるのか」

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https://novel.daysneo.com/works/episode/88cc37b82dd602a383540864d4b06557.html  ・・つまりこれは、女が男の性的魅力を別のところに見出しているんじゃないかって説の状況証拠のひとつだ。その別のところってのは、心のあり方、自分にどう向き合ってくれるかっていう態度だって言いたいわけさ

・・・(中略)・・・ でも、男が美人の女やセクシーな体つきをした女を求めるほどには、女は男のヴィジュアル面を気にしていないと思うよ。ところが異性に対する関心は、男以上にものすごく強い。男とは違った形でな

・・・いまのポリコレ、セクハラ、サベツ議論が、そういう大きな男女差の問題を見ないようにして成り立っているってことなんだよ。だから話が、『平等人格』っていう作られた枠組みの中でしか語られない。そうじゃなくて、その大きな違いをまず男女みんなで確認しあってから、ポリコレやセクハラについて議論した方がいいと思うんだ」

・・・「なが身はいかにか成れると問いたまえば、あが身は成り成りて成り合わざるところひとところありと答えたまいき。ここにいざなぎのりたまわく、あが身は、成り成りて成り余れるところひとところあり。」・・・

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https://novel.daysneo.com/works/episode/4f72020fdf3e10fcfc65e8b4b6e98b60.html

私の社会的関心。

仕事を通して何かがあると、すぐにそこから発展して、少子化や晩婚化を考えたり、日本の貧富の格差について考えたり、中国人の静かな領土侵略を憂慮したり、LGBT騒ぎやポリコレブームの意味に疑いを持ったり、今日は今日で、篠原から財務省のとんでもない国民騙しについて聞かされて、ああ、俺は何にもわかっていなかったと自省したり――こんな自分をこの人はわかってくれるだろうか。

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https://novel.daysneo.com/works/episode/4f72020fdf3e10fcfc65e8b4b6e98b60.html ・・心を落ち着かせるためにシューベルトの即興曲作品90と作品142をブレンデルの演奏で、ボリュームを小さくしてかけた。そう、できるだけさりげなく。

補註: 余談ですが、私もブレンデルのこのアンプロンプチュの演奏をよく聴いていました。L氏が5日を過ぎて初めてクルマに乗せられて板橋の自宅に向かうときにも、車内でこのCD演奏を聴かせました。私たち夫婦のささやかな願いの表現だったと言えるかもしれません。あれから28年余。L氏は東京でコンサートを聴きに行ったりしているのに、私たち夫婦は田舎でひっそりと暮らしていてなかなか音楽を生で聴く機会にも恵まれません。それでも・・今では音楽は主にネットで聴くことができる時代となり、ブレンデルの演奏も聴きますが、より多くはキーシンの演奏 Op.90−3 など・・を聴くことが多い私です。

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ブレンデルの演奏は、私たち、昔、東京でもボストンでもコンサートで聴く機会を持てた(ベートーベンのハンマークラヴィーアなど思い出す)のは、今も懐かしい。ユーチューブなどで、たとえばシューベルトの即興曲に関してだけでも、いくつものヴァージョンで聴くことができます・・たとえば:

https://www.youtube.com/watch?v=24DugWBRkYg&t=19s&ab_channel=ClassicalVault1

https://www.youtube.com/watch?v=j1rCDLGcVhs&ab_channel=ClassicalVault1

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補註: 小浜さんからは多くの著書やブログなどを通して、随分と勉強させて頂きました。

昨年の春、小浜さんとマコさんのお家にL氏といっしょにお伺いした折りに、移民や安全保障の社会的関心に関して話題となり、私の具体的な知識が小浜さんから教わったものであったことに気づいて、ほんの少しですがテレと言いますかなんだか気恥ずかしい思いが致しました。小浜さんはちょうど私の10歳年長・・先輩ですから・・。小浜さんとマコさんには私の癌治療研究の話を聴いていただいたり、2014年から始まるウクライナ戦争の歴史と現在を語り合ったり、時間が限られているのが悔しいことでした。その限られた時間の中でも、私たちの作ったソーヴィニヨンブラン2019の香りを楽しんで頂けたのは私たちにとっても嬉しい充実した時間でした。

日本ではいままだコロナ狂騒が終息しておらず、今いらっしゃるご施設に私たち外来者がお伺いすることができない状況ですが、もしもこんどの5月に(政府の予定通り)2類から5類へと規制解除されて貴施設訪問の私たちにも面会の自由が与えられればまた是非お目にかかりたいと願って居ります。補註230202終わり。

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https://novel.daysneo.com/works/episode/4f72020fdf3e10fcfc65e8b4b6e98b60.html より、<以下引用>

仕事で出会ったいろいろな人や出来事と地続きの問題について考えたことを書いているつもりです。別にそれをどうしようという計画があるわけではないのですが。

 いま関心を持っているのは、まず第一に不景気がどうして終わらないのか、それから、少子化による生産年齢人口の減少、LGBT差別にかかわる問題、移民問題など、時々は国際情勢の理解にも首を突っ込みます。

 今日もある親しい友人と飲んできたのですが、彼は大学で社会学を講じているので、不景気の原因について話してもらい、目からうろこの思いを味わいました。

 自分のこれまでの不明を恥じると同時に、これは多くの人が知っておくべきだと思っています。

・・・(中略)・・・

・・悪い予感もあれば、よい予感もある。悪いほうは、たとえそれが現実になったとしてもひるまず立ち向かい、よいほうは、美しい音楽に包まれるようにその流れに身をゆだねて行こうと思った。

<引用終わり>

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「やっぱ、『牛乳を注ぐ女』と、それから『手紙を書く婦人と召使い』がよかった」

あ、おんなじだ、と思った。(小浜、同書、https://novel.daysneo.com/works/episode/1864913d29e27a69c4d53b407a70dcb1.htmlより)

Vermeer 『手紙を書く婦人と召使い』 ウィキペディアから引用。

フェルメール 牛乳を注ぐ女 Johannes Vermeer – De melkmeid 作成: 1660年頃 ウィキペディアから引用。

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