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人類の歴史を大きく変えた「一神教モノシイズム」もまた、移民によって生まれ、移民によって育まれ、移民によって世界に拡がっていった。

2022年1月4日 火曜日 雪

神野正史 「移民」で読み解く世界史 イースト・プレス 2019年

エジプト新王国イクンアトン王(アメンホテプ4世)のアトン教・一神教モノシイズム: 一神教の起源については、以下のページもご参照ください。

移民の法則⑤ 人類の歴史を大きく変えた「一神教モノシイズム」もまた、移民によって生まれ、移民によって育まれ、移民によって世界に拡がっていった。(神野、同書、p43)

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アトン教の遺伝子DNAを受け継ぐ者たち

・・そこでたまたま彼らは、悠久の古代エジプト史の中でもたった10年しか存在しなかった「アトン一神教モノシイズム」と奇跡的な邂逅を果たしてしまったためです。

 じつはヘブライ人という民は、放浪のゆく先々で見聞した異民族の宗教を無節操に自分たちの信仰に採り入れてきた(『旧約聖書』が矛盾だらけ・支離滅裂なのはそのためです)民族です。

 したがってこのときも、信仰の根幹にかかわる理念「一神教」をあっさりと自分たちの信仰に取り込んでしまいました。(原注 『創世記』では神が「我々」と自称しているなど、『聖書』の中にもユダヤ教が元々多神教だった面影が随所に残っています。 HH補注 1611年の英訳「ジェイムズ1世ヴァージョン」では一神教へなじむような手直し「誤訳」が多く数えられています。)

 そうして生まれたのが「ユダヤ教」です。

 信仰上、ユダヤ教徒はそれ(モノシイズム)がさも自分たちのオリジナルのように語りますが、学問的にはアトン一神教からの“借用”にすぎません。

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ユダヤ教の確立

・・こうした北(イスラエル)王国の“堕落”を忌み嫌った南王国(ユダ王国)の民も、やがて新バビロニア王国に滅ぼされ、老若男女がバビロンに強制移住(所謂「バビロン捕囚」)させられました。・・じつはこのときの移民こそ、彼らが“真のユダヤ教徒”として確立する契機(きっかけ)となります。

 ユダヤ教の教義が確立し、『旧約聖書』が書かれたのもこのころですし、彼らのことを「ヘブライ人」ではなく「ユダヤ人」と呼ぶようになるのもこのころからです。

 もし「バビロン捕囚」という強制移民がなかったら、ユダヤ教も多神教ポリシイズムに転んで消えていったか、生き残ったとしても現在とはまったく違った形になっていたことは間違いありません。

 このように、一神教もまた「移民」によって生まれたものといってよいものでした。

 そして、このユダヤ教から派生したのがキリスト教であり、さらにこれらから派生したのがイスラームで、現在、地球上に存在するすべての一神教は、ひとつとして例外なくこららの亜流にすぎません。

 もし、ヘブライ人が「移民」などしていなければ! 

 そうなれば彼らがアトン一神教モノシイズムと邂逅することもなく、そうなればユダヤ教は多神教ポリシイズムのまま、他のオリエント諸教と同じように歴史の渦の中に消えていったことは間違いありません。(神野、同書、p42-43)

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