literature & arts

よだかは幸せなんかじゃなかったと思う。さんざん嗤われて、ひどいことをされたまま、空へ昇ったんじゃ。

2025年4月7日 月曜日 晴れ

道尾秀介 向日葵の咲かない夏 新潮社 2005年

道尾秀介 シャドウ 東京創元社・ミステリフロンティア 2006年

 ・・「どうしてあのとき、自分が死ななかったのか。どうして生きようと思ったのか。『よだかは、幸せだったのよね』っていう、お母さんの質問に、どうしてあんなに戸惑ったのか」

亜紀はいったい何を言おうとしているのだろう。

「凰介くんの小母さんは、よだかは鳳凰に姿を変えてもらって、幸せになったと思ったかもしれない。でも、あたしはやっぱり、そうは思えない。よだかは幸せなんかじゃなかったと思う。さんざん嗤われて、ひどいことをされたまま、空へ昇ったんじゃーー」

「それは、どういう意味?」

「悔しかったの。あたしは、嗤われたまま死ぬのがくやしかった」

「自分だけが死んで、自分にひどいことをした人が生き残るなんて、あたしは嫌。絶対に嫌。もし自分が死ぬなら、あたしはその前にーー」

亜紀は凰介に顔を向けた。(道尾、シャドウ、p251)

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補註: 本読書ノートのページではめったに登場しないミステリージャンル。

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