literature & arts

チャペック ロボットRUR(エル・ウ・エル)

2016年12月14日 水曜日 曇り

チャペック,カレル ロボット(R.U.R.) 千野栄一訳 岩波文庫 1989年(原作は、1920年秋に初版、1921年1月25日のプラハ国民劇場での初演)

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ドミン
何がご破算になったかね?

ヘレナ
あなた方の計画よ、ハリー。例えば労働者がロボットに対して暴動をおこして、ロボットを壊し、そして人間がロボットたちに武器を与えて蜂起した人たちに向かわせ、ロボットがたくさんの人を殺したらーーーそしてそのあと、いくつもの政府がロボットを兵隊にして、とってもたくさん戦争があって、これでおしまいよ、お分かりになる?

ドミン
それは予想したことだよ、ヘレナ。それは過渡的現象だよーーー新しい秩序への。(チャペック、同訳書、p73-74)

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アルクビスト
・・レンガの重さを計り、それを置き、そして、軽くトントンとたたくのは、両方のたなごころにとって、とてもいい気分なのです。

ヘレナ
たなごころにとってだけ?

アルクビスト
そう心にとってもです。一つのレンガを置く方があんまりにも大きなプランをたてるより正しいような気がします。私はもう年とった人間ですからね、ヘレナ、自分の趣味ですよ。

ヘレナ
それは趣味ではないわ、アルクビスト。

アルクビスト
そうでしたね。私はとても保守的なのです、ヘレナ夫人。こういう進歩なんて、全然好きじゃないんです。

ヘレナ
ナーナも同じよ。(チャペック、同訳書、p80-81)

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ヘレナ
ーーー私たち他の者やーーーそれに世の中にとってーーー何とはなしに非生産的ね。

アルクビスト
非生産生こそ、ヘレナ夫人、人間に残された最後の可能性になりつつあるのです。

・・・(中略)・・・

ヘレナ(静かに)
なぜ女の人たちに子供ができなくなったの?

アルクビスト
それが必要ではないからです。私たちは楽園にいるからです。お分かりですね。

ヘレナ
分かりませんわ。

アルクビスト
なぜなら人間が働く必要がないからです。痛みを感ずる必要もなく、人間はエンジョイする以外何も、なんにも、まったくする必要がないからです。ーーーおお、これこそいまいましい楽園です。(チャペック、同訳書、p83-84)

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アルクビスト
・・実を結ばぬ花は散らねばなりません。(同書、p86)

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