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ハシェク27歳、「犬類学研究所」を開設、犬の売買を試み、結局は失敗に終わる。

2020年7月26日 日曜日 晴れ

ヤロスラフ・ハシェク 不埒な人たち ハシェク諷刺短編集 飯島周訳 平凡社 2002年


ヤロスラフ・ハシェク略年表1910年 「動物世界」誌の編集者となり、定職を得、5月30日(ハシェク27歳)ヤルミラと結婚。しばらくは落ち着いた生活を送るが、間もなく企業的独立を望んで「犬類学研究所」を開設、犬の売買を試み、結局は失敗に終わる。(同書、p252)


・・とくに、画家ラダ(J. Lada 1887-1957)主宰の諷刺雑誌『カリカトゥリ』に加わり、ハシェクの文章とラダのイラストという組み合わせが実現した。これはハシェクの死後に刊行された作品でも続き、いわば最強のコンビを形成している。(同書、p257)

Josef Lada https://cs.wikipedia.org/wiki/Josef_Lada

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・・私は自分の店に「キノロギツキー・ウースタフ」すなわち「犬類学研究所」という名称を与えた。これは誇り高き学問的な名称で、わたしが大きな広告の中に印刷させた次の文句にぴったりだったーーー「犬類学的基礎による各種犬の飼育・販売および交換・購入」。  「犬類学研究所」という言葉を何回となく繰り返しているこの大きな広告は、他でもないわたし自身にも無言の賛嘆をもたらした。わたしはついに、研究所の所有者になったのだ。経験のない者にはわかるまいが、その中にはなんという誇り、なんという魅力があることか。広告の中でわたしは、関係する各種犬のあらゆる問題について、専門的な助言を約束していた。犬を一ダース買う人は、おまけとして子犬を一匹もらえる。犬は命名の日に、堅信礼の参加者用に、婚約者に、この上なしの贈り物で、さらに婚約祝いに、記念日祝いにも適している。こどもにとってはおもちゃになるが、そんなに容易に故障したりばらばらになったりしない。・・休暇旅行中いずこに犬を預けるべきか? 犬類学研究所へ。三日にて犬を紳士に仕立てるのはどこか? 犬類学研究所内。  これらの広告を読んで、わたしの叔父の一人は、危なっかしく頭を振ってこう言ったーーー「いや、おまえ、健康とは言えないな、首筋の上の頭のどこかが痛むんじゃないか?」  しかしわたしは、希望を持って未来を見据えていた。まだ一匹も犬をもっていなかったが、なにか注文が来ないかと熱心に待ち、広告を出して、正直でまともな店員、単純な兵士で犬を心の底から愛し、あらためて戦う必要のないような人物を求めたのだ。(ハシェク、「犬類学研究所」、同書、p200-201)


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