学ぶこと問うこと

産学連携の課題

2010年4月6日 火曜日

産学連携の課題に関して文章を書いたのがほぼ2年前。前任のセンター長として、活動報告書の前書きのようなものを依頼されて書いたものである。2年ほどしか経過していないこと、私の年齢の変化率も誤差範囲に収まってきているためもあろうが、読み返してみても私の視点は全く変化していない。

ただ、大学の報告書という形式上、少しだけかしこまった、若干大学らしいスノッビッシュな姿勢を装った文章にするよう工夫したのを覚えている。

産学連携の課題として、やはりお金の問題を避けて通ることはできない。政府の助成金が産学連携の原動力であるが、その動きを観察してみると、産業界に直接の助成金を投入することははばかられる。そこで、大学を窓口として、さまざまな大学の雑多な知的なアクティビティをリスク分散の拠り所として、競争によって得られた良い成果を産業界へ流し込む、という図式になっている場合が多い。

その場合、成果主義・実用応用主義にどうしても重点が置かれてしまう。産業界がお金を投資できるのは、百年後に人類の役に立つかも知れない成果ではなく、せめて10年後には形が見えてくるような成果でしかあり得ない。前記の文章の中にも記載したように、これは大学の学問や教育には危険な姿勢である。

大学での研究費獲得が非常に競争的となっている。科研費のアクセプト率が応募の4分の1以下程度が普通であることを考えると、残りの多くの部分をどうやってサポートするか、重い課題になってしまっている。産学連携では現実問題としてその一翼を担うことはできないし、担えと命じることは(目的の範疇がお門違いであることから)適切なことではない。

では、どうすればよいか?

今ここに私に簡単な答えを用意できているわけではないが、国家の税金の使い方は国の最も大切な意志決定事項であり、1月から3月にかけての通常国会で十分に審議されてしかるべきであろう。昨年末の事業仕分けに関しても個々の大切な問題に十分な説明と考慮議論の時間が割かれておらず、今年に入ってからの国会でも審議され尽くされることはなく、また今この4月を迎えてしまったようで、私には残念でならない。

以上、2010年4月6日付けのWEBページより再掲

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