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エントロピーの発見と理解の歴史

2016年6月14日 火曜日 昨日の雨、今朝の雨模様のため畑仕事はお休み。

エントロピーの発見と理解の歴史

鈴木炎 エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学 講談社ブルーバックス 2014年

水車とカルノーサイクル
サイクルの4ステップは、上射式水車の各動作に対応している(鈴木、同書、図1-10、p38)

「可逆(準静)過程」という離れ業である。具体的には、「等温」と「断熱」という2種類の過程を組み合わせて、・・
1 等温膨張
2 断熱膨張
3 等温圧縮
4 断熱圧縮
・・世に名高い<カルノー・サイクル>の完成である。(同書、p37-41より抄録)

このサイクルで注目すべき点は、二つある。
 一つは、このサイクルが実際に仕事をする、すなわち熱から動力を引き出すエンジンを体現していることである。・・・(中略)・・・いま一つは、すべてのステップの可逆性である。どの瞬間においても段差がなく、常に平衡を保ちつつピストンをそっと動かすので、その気になればいつでも逆向きに動かして元に戻すことができる。(同書、p41)

さて、このエンジンは効率において望みうる最高のエンジンであり、これを超えるエンジンは存在しない。・・・(中略)・・・水力の最大効率、衝撃回避の重要性、永久機関の不可能性、これらはいずれも、父ラザール(・カルノー)が執筆した機械学の教科書で強調されている点であった。水車のイメージは、父から子(サディー・カルノー)へと受け継がれたのである。(同書、p43)

熱の流れから引きだすことのできる動力の量には原理的な限界があり、どうやってもそれを超えることはできない。この限界は焼却炉と冷却器の温度のみによって決まり、熱エンジンの構造や作業物質によらない。(カルノーの原理)(同書、p44)

(1)われわれが「熱の流れから引きだすことのできる動力の限界」に到達できるのは、カルノー・サイクルのような理想的なプロセスの場合のみである。その場合、その限界効率は、温度のみの関数(いわゆる「カルノー関数」)として定量的に定まる。この値は物質・装置の如何によらない。
(2)現実のすべてのプロセスはこの限界値に到達することができず、動力は不可逆的・不可避的に浪費されてしまう。(鈴木、同書、p46)

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エネルギーの発見

エネルギーとは「<変転>するが<保存>する何者か」である、としか説明のつかないものなのである。(同書、p51)(補注*参照)

エネルギーについて、このような「可変だが不滅なる何者か」であると最初に定義したのは、ドイツ人の船医ユリウス・ロベルト・フォン・マイヤー(1814-1878)であった。(同書、p52)

エネルギー保存則に関して決定的な役割を果たしたのは、イギリスのジェームズ・プレスコット・ジュール(1818-1889)である。

ジュール、トムソン(ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)(1824-1907))にドイツのクラウジウスが加わり、カルノーの原理を台風の目とするデッドヒートの果てに、ようやくエネルギー保存則とエントロピーの概念が確立し、熱力学が人類の前にその全貌を現すのである。(同書、p55)

サディー(・カルノー)が確立したカルノーの原理は、熱から仕事への変換には限界があることを示していた。ジュールが決定した熱の仕事当量は、熱と仕事の等価性を示していた。この二つが両立するなどということは、到底ありえないと思われた。ドイツのルドルフ・クラウジウス(1822-1888)は、二つの理論の間に横たわる超え難いハードルを、単一原理ではなく、二つの原理を打ち立てるという離れ業で、鮮やかに撃破してみせたのである。(同書、p57-58)

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補注* 位置のエネルギーと運動のエネルギーと電気のエネルギーとは、同じ尺度で大きさを表すこともできるし、位置のエネルギーを運動のエネルギーに変えることも、電気のエネルギーを位置のエネルギーに変えることもできるので、エネルギーというひとつの概念ーーー直接または間接に仕事をすることができる能力という概念で統一することができるのです。(大村平、情報のはなし 日科技連 昭和44年、p14より引用)・・・とあるように、エネルギーを「直接または間接に仕事をすることができる能力」と考えるのが一般的な言葉の使い方であると思う。

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