2020年12月25日 曇り時々雪時々陽射し
鬼頭宏 人口から読む日本の歴史 講談社学術文庫1430 2000年(1983年『日本2000年の人口史』の改訂版)
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現代日本で起きている人口学的な地殻変動は、(1)少子化、(2)長寿化、(3)晩婚化もしくは非婚化、(4)核家族化とその結果としての高齢者単独世帯の増加、そして、(5)人口の都市集中である。
このことはひるがえってみれば前近代の人口は、(1)多産、(2)短命、(3)早婚・皆婚、(4)三世代同居の直系家族(stem family household)、(5)農村社会であったことを物語っている。
・・それではこのような人口学的な伝統はどこまで遡れるのだろうか。われわれが伝統文化と考えているような事柄の多くは室町時代後半から江戸時代前期にかけて生まれ、定着したといわれている。・・家族や人口行動における「伝統」も、どうやら十七世紀の成長と社会構造の大きな変化を経て、十八世紀に「伝統」として定着したと推測される。
すなわち、われわれが伝統と考えているような人口学的な特徴も、農業社会における市場経済の発展と生活水準の上昇に対応して生み出された歴史的な産物であったということである。
現代日本で起きている結婚の変化、少子化、高齢化、家族形態の変化も、一概に社会病理や社会問題としてみるのではなく、工業化をともなうひとつの文明システムが形成され、やがて成熟してきたことに随伴する現象であり、ここに近代日本の新しい人口学的システムが形成されつつあるとみるべきなのである。(鬼頭、同書、p269-270)
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