まちかど紀行

チャック靴の薦め

2010年4月10日

ここ数年で目覚めたこともいろいろあるのだが、誰にでもお勧めしたいのが、ジッパー(チャック)のついた靴である。脱いだり履いたりがチャックで行えるので、極めて簡便。

私がチャック式の靴に転向したのは3年前に8ヶ月間ほど病院病室での看病・介護にたずさわっていた頃だが、このチャック式でなければ、病室の戸口での着脱が大きくストレスになっていただろう。ひも靴を部屋に入るたびに脱いで部屋から出るたびに靴べらで履いてから跪いてひもを結んでからさあ部屋から出ようとしたら、受け持ちの先生がいらっしゃって、もう一度部屋にはいるためにひもをほどいたりしていたとしたら、とても病人のために熱湯をくんできてカップのインスタントみそ汁を溶いてあげるという気力は残されていなかっただろう。かといってサンダルや突っ掛けでは、風や雪の札幌の通りに曲がった鉄砲玉のように飛び出して、患者の食べたいホッカ弁メニューを買って暖かいうちに戻ってくるなどという日常は不可能であったろう。その点、チャックの靴は、チャックをはずせばスリッパ感覚でぺたぺた歩けるし、チャックをきちんと閉めあげればきわめてしっかりして速い動きも得意だ。病室を出たとたんにダッシュで10階を駆け下りてホッカ亭までの500メートルを競歩で歩き、弁当と飲み物を手に提げて再び病院の10階までの階段(約200段だったと思う)を駆け上るということが、日常的に可能である。一日2回の弁当買いと3ないし4回の病室と職場との往復を含む介護三昧の8ヶ月。こんな脚でかせぐ介護を続けられたのはまさにチャックのおかげである。十分条件ではなかったが、チャックの恩恵はわたしの介護人生にとっての必要条件ではあった。

3年後、今もその同じ革のウォーキングシューズを履いて、朝の通勤で東札幌までの7キロメートルを歩くことも多い。歩くの大好き。

今年の4月3日、夜22時、L氏の保育園の同窓会の引けた後、遅くなってしまったけれども、東京、板橋から王子までの石神井川沿いの花の道をみなで歩いた。私は介護で突っかけていたその同じチャックの革靴を履いて。そして、3年前は病室ではほとんど一歩も歩くことのなかった彼は、運動靴を履いて自分の脚で。こうしてL氏が生まれ育ったふるさとの花の下を再び歩くことができた。板橋から王子まで。音無親水公園はL氏が生まれて初めて水遊びをしたところ。

以上、2010年4月10日付けのWEBページより再掲

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