culture & history

天、何をか言はんや。四時行はれ、百物生ず。天、何をか言はんや

2016年1月3日

白川、孔子伝、中公文庫、1991年(オリジナルは中公叢書1972年)

天、何をか言はんや。四時行はれ、百物生ず。天、何をか言はんや (白川、孔子伝、中公文庫 p86)

孔子が、古い神巫の世界、老彭への回帰を示したのは、おそらくその最晩年のことであろうと思われる。陽虎へのいまわしい怖れも消え、周公を夢にみることも絶えたのちに、孔子は自己の出発点であった巫祝の世界、すべての存在の根源として、あらゆる生にかかわる神秘のすがたを直観したいと思ったのであろう。おそらく何かそういう深い霊感が孔子を包んだときのことであろうが、孔子は突然つぶやくように、「われ言ふことなからんと欲す」といった。・・・孔子にとって、「述べる」ことも今は超えるべきものであった。孔子はしずかに、「天、何をか言はんや。四時行はれ、百物生ず。天、何をか言はんや(陽貨)」と答えている。天道の流行してやまざる世界、万法が流転のうちにその実相を具現する世界、それは今まで、孔子がほとんど口にすることのなかった、形而上の世界である。巫の伝統は、孔子において、その極限のところまで高められていった、ということができよう。(白川、孔子伝、中公文庫 p85-86)

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