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植物の体の中では何が起こっているのか:動かない植物が生きていくためのしくみ

2020年3月13日 金曜日 曇り

嶋田幸久・萱原正嗣 植物の体の中では何が起こっているのか:動かない植物が生きていくためのしくみ ベレ出版422 2015年

補註: この本は、一般向けにとてもわかりやすく書かれた植物生理学の入門書です。どなたにもお奨めできる最初の一冊だと思います。

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光合成はいつ生まれたかーー植物の起原に迫る

光合成と呼吸は、いったいどちらが先に確立された仕組みなのでしょうか?

・・続いて、より効率のいい光合成能を獲得した生物の子孫に、「藍色光合成細菌」と呼ばれる「シアノバクテリア(藍藻)」の祖先が誕生し、それがいずれは葉緑体として宿主の細胞に取り込まれたと考えられています。

原書の光合成細菌からは、別系統の子孫も生まれてきます。それが「紅色光合成細菌」で、「好気呼吸」と「光合成」を周囲の環境に応じて使い分ける変幻自在の能力を獲得しました。・・「電子伝達鎖」と「ATP合成酵素」の仕組みが「好気呼吸」と「光合成」で共通しているからの芸当です。この「紅色光合成細菌」は、誕生から約20億年の時を経て、現代の地球でも生き延びています。

この優れた能力をもった「紅色光合成細菌」から、どういうわけか、「光合成」の能力を失った細菌が生まれ、それが、「好気呼吸」を行うミトコンドリアや大腸菌の祖先になったと考えられています。

葉緑体とミトコンドリアが、ともに光合成細菌という共通の祖先から進化したというこの仮説は、光合成と呼吸が似通っている理由を鮮やかに説明します。・・・(中略)・・・

・・私たち人間の細胞の中にあるミトコンドリアも、元をたどれば「光合成」の能力を備えていたということです。ミトコンドリアが「呼吸」(細胞呼吸)で使う「電子伝達鎖」や「ATP合成酵素」は、太古の昔に「光合成」にも使われていたもので、私たち人間も、いわばその名残の仕組みを使って生命活動を営んでいます。

人間は、有機物や酸素の生産を植物に頼っているという以上に、もっと深い細胞の仕組みの次元で、植物と分かちがたくつながっています。人間が生きる仕組みの一部(呼吸)は、植物が生きる仕組み(光合成)から派生したものなのです。(以上、嶋田・萱原、同書、p344-345より部分引用)

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