雑記帖

高機能素材ウェア

 

2004年8月25日

高機能素材ウェアの飛躍的発展

今年(2004年)の夏は、札幌でも気温30度を超える暑さが続いている。私が札幌にやってきてから6年目だが、去年も一昨年もその一つ前の年も「寒い夏」だった。だから、今年のこの暑さは、札幌に来て以来初めての暑い夏。しかし、この暑さにもかかわらず、私は、極めて元気に過ごしている。細かいことにこだわらず、良く食べる。特に山登りトレーニングをした日は良く寝られる。

今シーズン、久しぶりに、「散歩をしたい」そして「山にも登りたい」と思うようになった。もっと息の長い散歩や山登りにしたい。

雪解けを待って、すなわち、スキーシーズンが終われば、早速トレーニングだ。朝、できるだけ早く起きて、最寄りの山、円山に登りに行く。休みの日には夕方に登ることもある。山頂は海抜225メートル。自宅からは円山公園を抜けて歩く。北海道神宮の前のお稲荷さんのある登り口までが10分。登り口から山頂までが20分。下りてくるのにもほぼ同じ時間を要するので、1時間で行って帰って来る。5月はエンゴサクやニリンソウ、ヒトリシズカやエンレイソウなどの花が咲いていて春を感じさせてくれる。さらに暖かくなるとシラネアオイの大きな花を見つけることもある。6月はカラスの襲撃の危険にさらされ、背後にカラスの気配を感じれば、後ろ頭が冷や冷やする。7月の夕方には麓の円山球場の高校野球の応援がにぎやかだ。この道はシマリスが多い。アカゲラははっとするほどの美しさだ。キタキツネには一度出会ったきりだ。そのうちまた会いたい。

25年前に北アルプスの山を歩いていた頃と比べて大きく変わったのは、ウェアの機能面の著しい進歩だ。昔は毛の下着が良いと言われていたが、ちくちくして着心地が良くないし洗濯が難しい。夏だけなら、綿の下着もOK。しかし、化繊の下着は、汗をすわず、雨に濡れれば体温を失うため、夏でも危ないと言われていた。ところが、最近の高性能といわれるアンダーウェアの素材はほとんどが化学繊維だ。私と化繊との付き合いは6,7年前のフリース素材(ポーラーテック)のセーターとの出会いに始まる。軽くて肩が凝らず、肌触りが良くて暖かい。以来、ウールのセーターはめったに着ない。

そして、3年前の冬、サーモライト(商品名:サーマスタット、ポーラーマックスなど)のアンダーウェアを試みて以来、冬はすべてサーモライト。ポリエステルの高機能素材で、汗を良く吸い、驚くほど乾きが早い。スポーツで汗をかいても体を乾いた状態に保てるため、体が冷えない。

さらに今年の春は、クールマックス素材のシャツを通信販売で購入。やはり高機能素材で体から出た汗を外に放出すると同時に、外気を取り込んで冷却する機能をもち、吸湿性、速乾性、通気性に優れる、とのこと。確かに、汗を良く吸って、乾きが速い。涼しく、気持ちがよい。肌触りも良く、軽い。今シーズン、このクールマックスのウェアを手放せなくなってしまった。綿のTシャツなどと比べると違いは歴然としている。綿は、肌触りの心地よさはすばらしいのだが、一度吸った水分を放出するのが苦手。つまり、乾くのが極めて遅い。汗をかいたらすぐに着替えないと体が冷えてしまう。クールマックスのタイツもひとつ持っている。筋肉に沿ったカッティングがサポーターの役目も果たしてくれるので、少し高い山に登るときには、このタイツで行く。やはり速乾性で、意外と涼しい。不思議なことに、着ていないときよりも涼しく感じられ快適だ。

子供の頃、汗をかいて体が冷えると決まって風邪を引いたものだった。家族からも自分でも、私は風邪を引きやすい体質だと思いこんでいた。ところが、今は、めったに風邪を引かない。これは、札幌での生活は、人口密度などの影響で風邪のウイルスへの暴露が少ないことも大きいであろうが、クールマックス、サーマスタットなどの高機能素材ウェアに助けられているところも大きいと感じる。風邪を引きやすかったり、スポーツで疲れやすい、など感じていらっしゃる方々には、是非、これら高機能素材のウェアを勧めてあげたいと思う。

ところで、クールマックス素材は、ポリエステルの繊維に4つの溝をつけたもの。断面はUFO型となる。この溝によって吸湿性が高まり、同時に表面積も広がり速乾性も生まれる。1986年に開発された。20年前の日本の繊維業界といえば、本業の繊維を作ることに行き詰まって、バイオやITや、果ては不動産売買(?)などの異業種への転換に活路を見いだそうとした企業も多かった。新しい繊維を作り出すことは難しいし、今の化学繊維はすでに十分に消費者の需要を満足させている、新しいものを開発しても売れないだろう、そういう行き詰まり感、フロンティアの喪失感が業界を覆っていたのではないか。しかし、そのような大勢の中で、クールマックスのデュポン社、ポーラーテックのモルデンミルズ社などは、表面的には成長しきったかに見える繊維業界の中で、人々の真の需要から目を背けず、ポリエステル繊維を研究開発することによって、世界中の人々に役立ち愛される高機能製品を世に問うことができた。

私たちの生物・医学分野も、すでにポストゲノム時代と呼ばれ、どの領域を訪ねてみても、他の研究者たちによってすでに十分に掘り返されて整備され、一見、もはやどこにもフロンティアが見当たらないように思われ、研究の目的地を見失って立ちつくしてしまいそうになる。しかし、ほんとにフロンティアが無くなったのか?

たとえば進行して見つかった膵癌や肺癌、私たちが30年前に大学で習った時と、今も全く変わりなく、真に有効な治療法はない。病に苦しむ多くの患者がいる限り、そこには、本当の「必要」が間違いなく存在する。治療法の開発を目指す私たちは、そこから目を逸らすことなく、研究を続けてゆきたい。いつかは、治療法研究の分野で、この「クールマックス」に匹敵するような、人々に役立つ新しい方法を開発して世に問いたい。

<以上、2004年8月25日付けWEBサイトより再掲>

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