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ベクトル場・微分方程式が語る世界

2016年9月8日 木曜日 曇りときどき雨

川久保勝夫 なっとくする行列・ベクトル 講談社 1999年

ベクトル場が語る世界
自然現象は、(理論を構築することによって)「微分方程式」と呼ばれるもので表現できる。そして実際にそこで何が起こるかは、この微分方程式を解くことによって明らかになる。ここでいうところの微分方程式とは、ベクトル場の別名と考えてもよいであろう。(川久保、同書、p13)

そもそも微分という操作は、関数を局所的に見て線型化したものといえる。また、スカラー場があると、そこから微分を介してベクトル場が導かれたりする。さらに、ベクトル場とは微分方程式のことにほかならず、他変数関数の微分や積分においては、行列や行列式が必然的に登場する。ヤコビ行列やヤコビ行列式と呼ばれるものがそれである。したがって電磁気学や流体力学においては、ベクトル場を静観するのではなく、微分方程式の視点でとらえることにより、その特性が見事に表現されることになるのである。  このように、微分積分学と線形代数学とは切っても切れない関係にある。(川久保、同書、p239-240)

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マルコフ過程と行列
固有値も固有ベクトルも、与えられた行列に文字通り固有のものであるから、この驚くべき現象も、行列を使った視点から見ることにより、その背後にある数学的なしくみが見えたというわけである。行列のパワーを、肌で感じとっていただけたと思う。(川久保、同書、p245)

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補注 川久保さんの線形代数学の
教科書で勉強させていただいた10年来の過去があるが、今回は「なっとくする」シリーズの副読本を、おさらいのために通読。行列式の幾何学的な解説など、読んでいてとても面白く進められた。ただし、8章のエルミット内積辺りになると、もっと詳しい本で練習問題を解きながら進めないと理解が定着しない、というのが現在の私の学習段階である。
 著者の川久保さんはこの本を出版された年の4月(出版されたのは同年12月)に57歳でお亡くなりになられた。残して下さった貴重な著書をこれからも大切にしたいと思う。(2016年9月10日附記)

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