ミニレクチャー: 質問のしかた
その2 その研究で本当にチャレンジングなところはどこ?
2011年6月14日 改訂2011年8月2日
前回(質問のしかた その1 その意味は?)のおさらい:
まずは、相手の話を理解することが大切。よって、言葉や用語の意味(専門用語なども含めて)をたずねて確認するのがよい。要点としては、相手がどの範囲のことまで答えればよいかヒントをひとこと入れると良い。「その言葉に関してもう少し詳しく説明してください」、「その方法に関して簡単に教えてください」、「その考えに関して具体的な例をあげて解説していただけませんか?」など。
今回は、プロジェクトの「勘どころ」を問うてみよう。
研究プランに関しての質問:
「このプロジェクトで一番むずかしいと予想されるところはどこでしょうか?」
「このプロジェクトで技術的に一番むずかしいと予想されるところはどこでしょうか?」
「このプロジェクトのA(具体的な段階をあげるとよい)のところで、もしうまくいかなかったとき、次にどのような作戦をとればよいのでしょうか?」
「このプロジェクトがうまく成功したときにどんな利益があるのでしょうか? たとえば実際の癌患者さんの治療に応用できるのでしょうか?」
うまくいった結果発表に対する質問:
「このプロジェクトを始めた時点で一番むずかしいと考えていたところはどこだったのでしょうか?」
「このプロジェクトで技術的に一番むずかしかったところはどこでしょうか?」
「このプロジェクトのA(具体的な段階をあげるとよい)のところでひょっとしてうまくいかなかったとき(仮説が間違っていたとき、など)、次にどのような作戦をとろうと計画していたのですか?」
「このプロジェクトが成功して、次にどんな発展につながったのでしょうか? たとえば実際の癌患者さんの治療に応用できているのでしょうか?」
HH解説:
「情報を与えられての選択」に注意。結果に関する情報を先に与えられている場合には、そうでない場合と比べ、難しさが大きく異なる。プロジェクトがチャレンジングかどうかは、与えられている情報に依存し、評価の時点ごとに異なってくる。ある非常にチャレンジングな仕事がうまくいった後、それによく似た別の仕事は全くチャレンジングでなくなってしまい、始める価値がなくなっている場合がある。一方で、世の中の人々はうまくいくのが当たり前と考えて手を付けられていないプロジェクトが、ある情報(失敗の知見など)が得られたために真にチャレンジングな仕事だとわかる場合もある。
HH解説:
研究プロジェクト: チャレンジングな・難しいがやりがいのある仕事を行おう。では、どんな仕事がチャレンジングな仕事なのか?
1. 目標設定に関して: (A)たとえ成功しても、成果が役立たなければ、始める意味がない。役立つとは、学問の発展に貢献し人々の幸福につながること。目標は高く。 (B)遠すぎる目標だけでは、到達する前に息が切れてしまい、どこにも到達できない。遠くの目標を見据えながらも、妥当な中間目標地点(マイルストーン、一里塚)をいくつか設定しよう。中間目標をひとつひとつ達成しながら最終目標地点を目指そう。チャレジングなのは、最初の中間目標地点も価値あるような仕事。
2. 技術的な困難に関して: 易しすぎれば始める価値がない。難しすぎれば成功する見込みはない(困難ではなく危険)。チャレンジングなのは「非常に難しい、しかし私なら最後にはきっと成功するだろう」と念じながら進める仕事。
3. プロジェクト選択に関して、あるいは役割分担に関して: 競争(秘密)よりも協力(連携)。できるだけ多くの正しい情報をグループの皆と共有しよう。ハラを割ってディスカッションすることができる人間関係・研究グループを築こう。役割分担のなかで一人一人の個性を発揮しよう。チャレンジングな(魅力的で楽しい)のは、人と協力しながらも自らの個性を活かし伸ばし続けてゆけるような仕事。
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2011年6月14日付けのミニレクチャー資料を再掲
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