コシファントゥッテに非ず：ニヒリズムの対極にある「女は同じ」ほのぼの物語。 | Be the change you wish to see in the world.

2021年3月10日　曇り

女は同じ物語　山本周五郎 https://youtu.be/IjgX8kpi2Tc　アリアさんの朗読。

城代家老の子息・広一郎の女嫌いは、許婚者に見向きもしないほどの徹底ぶり。ある日、家庭内で絶対的権力を持つ母のさしがねで、紀伊という侍女をつけられて―。ユーモアたっぷりに女性主導の恋を描いた「女は同じ物語」。

山本周五郎作「女は同じ物語」：「どんな娘でも結婚してしまえば同じようなものだ。」父が広一郎に言った。城代家老の息子広一郎は二十六歳になるが女嫌いで許嫁とも結婚しないのであった。しかしそれには理由があった。

補註：　青空文庫に本文が載っていないため、今回は山本周五郎を読むアリアさんの朗読で聴いた。先日のこのWebページ「律子と貞子」https://quercus-mikasa.com/archives/11365　でダポンテ・コシファントゥッテのニヒリズムに関してコメントした。これとは対照的に、山本周五郎の「女は同じ」はほのぼのとしたユーモアを基調とした幸せヴァージョンであった。ニヒリズム無し！　本日、紹介した「小指」にも同じ様な局面がある。けれども、同工異曲とはいえ、それぞれに良く、楽しめた。

少年（12歳）の広一郎が5歳年下の許嫁（いいなずけ、いいなづけ）にいじめられる描写（広一郎の独白として語られる）は、それはもう、次から次へと、出てくること、出てくること。これは、却って痛快なほど、落語話のようである。紀伊も思い出しては、つい、笑いを怺えるのが難しいほど。太宰治の「男女同権」（こちらは悪魔的イジメのオンパレード）を思いうかべながらの、山本周五郎版・幼女善良・痛快意地悪小話集と言ってもよいかもしれない。

二人は幸せに結ばれ、そして十年後、イタリアのお話しであれば、ソフィア・ローレンとマストロヤンニの映画の夫妻のように、まるで皮肉な「子沢山のやかまし家族」のシーンが蛇足でつけ加わるのだろう。けれどこの周五郎版では、一週間後・・何にも気づかないお父さん（お仕事では城代家老だからとても偉いのだ）が、家庭の中では、ほのぼのとした幸せユーモアの仕上げ塗りを担当してしまうのである。ただし、お父さん本人は、女性に関しては諦念している真面目なニヒリストである。まさに、「男女同権」が根付かない、女性主導の日本の夫婦・親子・許嫁同士であった。

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補註：　山本周五郎『椿説女嫌い』　山本周五郎を読むアリア　さんで聴いた。こちらはユーモア噺。余りにも強い「女権」に対し、何とか「男権」の向上を図ろう、一矢報いようという頑張り。『じゃじゃ馬馴らし』の周五郎版と言えば良いのだろうか。この作品は、漫画に仕立てても面白いだろうし、長編の落語に編曲しても人気作となろう。

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山本周五郎『山椿』は、キヌとミチ。ロミオとジュリエットの周五郎ヴァージョンと言っても良いか。他の周五郎短篇と比べて、ややストーリーの組み立てに無理があるように感じた。同じく、アリアさんの朗読で聴いた。

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補註：　同アリアさんの朗読は充実している。＜以下引用＞

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彩虹　　山本周五郎 https://youtu.be/fx9BvqV0W8k

春いくたび　山本周五郎 https://youtu.be/rWIwOd9FaD8

紅梅月毛　山本周五郎 https://youtu.be/w9CwXZKOLH0

蕭々十三年　山本周五郎 https://youtu.be/QXmT-erWNhA

奇縁無双　山本周五郎 https://youtu.be/V4Emime0H6s

屏風はたたまれた　山本周五郎 https://youtu.be/LS9poANBKoc

めおと蝶　山本周五郎 https://youtu.be/anmJHSGkbuk