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「貧しい」「社会政治経済システムがシンプル」「部族は存亡の機に立たされている」という社会背景の中に育まれた民主制

2022年2月7日 月曜日 晴れ

神野正史 最強の成功哲学書 世界史 ダイヤモンド社 2016年

神野正史 現代を読み解くための世界史講義 日経BP社 2016年

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現代「民主制」の機能不全は歴史的な流れ

・・洋の東西を問わず、古今を問わず、人は「制度」を過信し、これにしがみつこうとするものです。おのれを苦しめている元凶こそが、今自分がしがみついている「古い制度」なのに、それに気づくことのできる人はおおくありません。・・・(中略)・・・

・・「民主制」とて例外ではありません。  しかも、すでに民主制を育んだ「前提条件」が崩れてきています。現在、民主主義から派生するすべてがうまく機能しなくなりつつあるのもそのためです。  そもそも民主制は、貧しく、社会が不安定で、政治経済がシンプルで、常に部族が存亡の機にさらされていた厳しい環境の中に生きていた遊牧民の中から生まれた制度です。豊かで、社会が比較的安定していて、複雑な政治経済機構を有していた農耕社会からは、千年万年の時間を経ようが、自然発生的に「民主制」が生まれることは決してありません。・・・(中略)・・・遊牧社会の中から「民主制」システムが自然と育まれていったのです。

 したがって、「貧しい」「社会政治経済システムがシンプル」「部族は存亡の機に立たされている」という社会背景の中に育まれた民主制は、その前提条件が崩れたとき、たちまち揺らいでいきます。(神野、「世界史講義」、p57-58)

 英雄が現れた場合ーー民主制の動揺(例1)

 危機が去り、豊かになった場合ーー民主制の動揺(例2)

・・このように「民主制」もまた、他のすべての制度と同じように、汎用性のあるもので永続性があるものでもなく、よって立つ社会基盤がなくなれば、たちまち機能しなくなるものなのです。

 民主制の前提が崩れた日本

 すでに制度が形骸化し、機能しなくなっているのに、これにしがみつくならば、アテネと同じ轍を踏んで亡び行くことになります。  ほかでもない、今の日本のことです。現代日本を見渡せば、「民主制の前提条件」がことごとく消え失せています。

 まずは「貧しさ」の消失。・・・(中略)・・・こうして、「貧しさ」というひとつの前提条件が失われたことによって、人々はアテネ同様、政治的関心を失います。民主制を支える絶対条件のひとつは、「国民一人ひとりによる熱烈な政治への関心」です。国民が政治への関心を失ったとき、民主制はたちまち形骸化し、「デマゴーゴス」が跋扈し、衰亡していくことになります。

 政治・経済が「手が付けられない怪物に」

・・・(中略)・・・もはや政治家ですら、どういう施策をすれば現状の社会問題・政治問題・経済問題・外交問題を打開できるのかわからない。・・政治アナリスト・経済アナリストといった専門家たちですら、(仕事柄わかったふり、あるいはわかっていると自分では信じていますが)実は何もわかっていないという惨状です。(神野、世界史講義、p61-63)

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 民主制が時代に合わなくなったにもかかわらず、「次」が見えてこない時代。これから人類はどこに向かおうとしているのでしょうか。(神野、世界史講義、p68)

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