2023年1月1日 日曜日 曇り
田中正明 新版 パール判事の日本無罪論 小学館新書 2017年(オリジナルは1963年に慧文社より刊行された『パール博士の日本無罪論』を新書化したもの。私の持っているのは新書版) 朗読版(菅原拓真朗読、Audible版、2018年)
(1952年、再度日本を訪れたパール博士は、大阪の弁護士会館で法律家を前に、次のように訴えた。)
・・日本とドイツに起きたこの二つの国際軍事裁判を、他の国の法律学者が、このように重大問題として真剣に取り上げているのに、肝心の日本において、これがいっこうに問題視されないということはどうしたことか。これは敗戦の副産物ではないかと思う。すなわち一つの戦争の破壊があまりにも悲惨で、打撃が大きかったために、生活そのものに追われて思考の余地を失ったこと、二つにはアメリカの巧妙なる占領政策と、戦時宣伝、心理作戦に災いされて、過去の一切があやまりであったという罪悪感に陥り、バックボーンを抜かれて無気力になってしまったことである。(田中、同書、p247)
・・敗戦によって心のよりどころを失い、物質的にも困窮した時代に、国民を苦しめている一切の弊害はここにあるのだといって、虚偽の原因を示し、これを宣伝し鼓吹することによって、人心をあやまらせることはきわめて容易である。・・こんな時期につけ込んで、法律に名を借り、軍事裁判といういかめしい外貌をまとって、日本民族の弱体化をねらうようなやり方は許しがたい・・そして、司法裁判所たるものが、このような妄想(日本人の罪悪感や劣等感)を、植え付ける仕事に手を貸すべきではない、と(パール判事は)主張し、この裁判が与える日本国民への思想的影響を憂慮したのである。(同書、p256−257)
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インドの軍事裁判
・・英国としては、二百余年の主権者としての威信を保持し、インドの統治を盤石ならしめるためには、反逆者に対してはこれを徹底的に懲らしめる必要がある。・・ところが、この全インドに巻き起こったすさまじい民族的抵抗に逢着して、英政府も総督も軍司令官も狼狽した。あわてふためいた彼らは、ついに軍事裁判の最高責任者をして、反乱罪は取り下げる、たんなる殺人暴行罪として起訴すると声明せしめたが、インド民衆の怒りは、それでもなお、収まらなかった。(田中、同書、p262)
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・・パール博士は、東京裁判を通して、戦傷者の思いあがった傲慢な態度に痛棒をくらわせると同時に、日本国民よ卑屈になるな、劣等感を捨てよ、世界の指導国民たる自負をもって、平和と正義のために闘ってほしいと訴えている。(田中、同書、p264)
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