白川静 中国古代の文化 講談社学術文庫441 1979年
2015年11月29日 日曜日 晴れ
氏と族: 祭祀共同体としての氏、軍事共同体としての族
祖祭には犠牲を供して祭り、祭りののちにはその祭肉を分け合い、同族のものが集まって会食する儀礼が行われた。これを共餐という。・・・(中略)・・・祭事ののちに食事をともにするのは、同族者としての行為であり、共餐によって祖神と同族者とが結合される。それは共同体としての関係を確かめる行為である。 共餐によって、人はその構成員となる。(同書、p88)
氏の字形は、・・・(中略)・・・細身の刃の鋭いナイフの形である。・・・(中略)・・・この器でその祭肉を切り、その儀礼に参加するものに肉を頒かち与えるものである。その肉を胙(そ)という。本来は同族のものにのみ与える定めであるが、・・・(中略)・・・これは分家が独立するとき、本家から与えるもので、その例にならって行われたものであろう。(同書、p90)
祖祭と共餐の儀礼が、祭祀共同体としての氏の原理であり、祖霊の宿る氏族旗への軍令的な誓いが、軍事共同体としての族の原理となる。それらはいずれも、共同体の成員としての盟約の方法に関する文字で名づけられる。(同書、p91)
古代の盟誓は、すべて神を対象とし、神と約束する行為であり、そこに秩序の根原が求められる。それは古代の秩序が、のちの時代の制度や契約のように、人為的なものによって成り立つのではなく、共同体としての存在そのものが、すべて真意により、神々の諒解によって成立するものであったからである。(白川、同書、p98)
*****
**********