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雪は藍関を擁して馬進まず

2016年4月13日 水曜日 曇り

一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年 p25

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左遷至藍関 示姪孫湘 韓愈 左遷されて藍関(らんかん)に至り 姪孫(てつそん)湘(しょう)に示す

  一封朝奏九重天   一封(いっぷう)  朝(あした)に奏す  九重(きゅうちょう)の天
  夕貶潮州路八千   夕べに潮州(ちょうしゅう)に貶(へん)せらる  路(みち)八千
  欲為聖明除弊事   聖明(せいめい)の為に弊事(へいじ)を除かんと欲(ほっ)す
  肯将衰朽惜残年   肯(あえ)て衰朽(すいきゅう)を将(もっ)て残年を惜(お)しまんや
  雲横秦嶺家何在   雲は秦嶺(しんれい)に横たわりて  家  何(いず)くにか在る
  雪擁藍関馬不前   雪は藍関(らんかん)を擁(よう)して  馬  前(すす)まず
  知汝遠来応有意   知る  汝(なんじ)の遠く来たれる   応(まさ)に意(い)有るなるべし
  好収吾骨瘴江辺   好し  吾(わ)が骨を収(おさ)めよ  瘴江(しょうこう)の辺(ほとり)に

(訓読は一海、同書、p26-28)

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このとき韓愈は五十二歳。わが行為は正義のため、それによって罰を受けようと、残された老い先は短い、何をくよくよすることがあろうか、というのである。 

だが、いま流罪の身となってさしかかった藍関の風光は、きびしい。

雲は秦嶺(しんれい)に横たわりて  家  何(いず)くにか在る
雪は藍関(らんかん)を擁(よう)して  馬  前(すす)まず

・・・季節は新春を迎えたが、山にはまだ雪が残っている。その雪は、ここ藍関の関所を抱擁するように埋め尽くして、わが乗る馬もなかなか前へ進もうとしない。(一海、同書、p28)

よし、・・瘴気のたちこめるあの南方の川のほとりへ、私の骨をひろいに来てくれたまえ。(一海、同書、p28)

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