アッシリアの竪琴「ナブラ」から始めるベクトル解析

2016年7月11日 月曜日 晴れ 〜 7月12日 火曜日 晴れ

西野友年 ゼロから学ぶベクトル解析 講談社 2002年

お相手は連続体:
質点とは全質量が一点に集中した仮想的な物体。
空気や水や金属のような均質で連続なものを「連続体」と呼んで質点とは区別して扱う。

ベクトル解析:
連続体力学を記述するのに必要な数学として、自然と「ベクトル場」や「ベクトルの微積分」などが編み出された。
解析する対象はあくまでも連続体そのもの。

相対性理論:
「空間そのものが回転・伸縮するような連続体である」という発想の転換によって得られたもので、やはりベクトル解析(とその拡張版のテンソル解析)が大活躍する。(西野、同書、p6-7より抄録)

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覚えよう これがナブラだ

「勾配ベクトル場」

「ナブラ」と呼ばれる下向き・大文字の三角形の出番だ。ベクトルのように見えるけれど、要素を見てわかるようにコレ自身では何の意味も持たない。後にrの関数、たとえばU(r)を持ってくると・・とベクトル関数 ∇U(r) = -F(r) が得られる。こういう風に、右にある関数に働き掛けて、それを別の何かに変形する働きを持つものを、物理では演算子、数学では作用素と呼ぶ。演算子は必ず後に関数を従える寂しがり屋だ。(西野、同書、p56)

アッシリアの竪琴「ナブラ」が ∇ に似ているので、いつの間にか ∇ をナブラと読むようになった。(p57)

U(r) はスカラー場、∇U(r) はベクトル場。要するにスカラー場があれば、それに∇を作用させることによって、必ず「勾配ベクトル場」が得られるのだ。このように、∇はスカラー場からベクトル場への「架け橋」なのだ。(p58)

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「発散 divergence」

位置rを内部に含むような体積 ⊿V の微少な領域を考えた場合、そこから単位時間に抜け出す体積は ∇・v(r,t)⊿V と表せる。
微少な領域「体積素片」から「外に抜け出て行く」分量を端的に表す言葉・・・「発散 divergence」(西野、同書、p75)

ベクトル場の発散 div v = ∇・v

発散 div = ∇・v は「ベクトル場からスカラー場への懸け橋」と考えることもできる。(西野、同書、p89)

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勾配の発散
∇は、スカラー場からベクトル場への懸け橋だった。これに節操なく div = ∇・ を作用させると、またまたスカラー場・・に戻ってくる。 div = ∇・ はベクトル場からスカラー場への懸け橋だった。じゃあ、最初に考えた φ(r) と、最後に出て来た g(r) との関係は? まず言えるのは「両方ともスカラー場である」ことだ。橋を二度渡って、スカラー場 → ベクトル場 → スカラー場と戻ってきたことになる。(西野、同書、p119)

ラプラシアンは ∇2(∇の二乗)と書けば、それで十分なのだけども、・・歴史的には三角形の記号
ラプラシアン △ = grad div = ∇・∇ = X,Y,Z各方向へ2回微分したものの和
が使われるようになった。たとえば g(r) = △φ(r) という風に。(西野、同書、p121)

もし中国で数学が発達していたならば、∇は「傾」grad、∇・は「散」div、ラプラシアンは「散傾」など、ちょっとは見易い(?)記号になっていたろうに…(西野、同書、p121)

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ローテーション登場
∇ × v(r)
v(r) も ∇ × v(r) もベクトル場なので、rotation は「ベクトル場からベクトル場への懸け橋」になっている。(西野、同書、p149-150)

ローテーションの意味
少し厳密さは抜きにして「ローテーション」の意味を語るならば、それは「流れv(r) に乗って漂う(表面にヒゲの生えたような)球が位置r付近を通過するとき、 ∇ × v(r) はその球が回転する角速度ベクトルΩ(r)の2倍を表す」と考えて良いだろう。(西野、同書、p151)

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スカラー関数φ(r)に対して rot div を取ると、必ずゼロになる。
ゼロになる式1 rot div φ(r) = ∇ × (∇φ(r)) = 0

ベクトルポテンシャルに限らず、一般に任意のベクトル場F(r)について次の関係式が成立する。
ゼロになる式2 div rot F(r) = ∇・(∇ × A(r)) = 0

こんな風にあらかじめゼロになる演算子の組み合わせを記憶しておくと、イザ計算をする時に余分な労力を使わずに済む。数学・物理屋はナマケ者であるという習性をお忘れなく。

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2016年7月13日 水曜日 曇りときどき晴れ

恥ずかしながら、物理や数学の教科書や参考書を最後まで、余すことなく読んだ経験って殆どない。大抵は途中で沈没する。・・そう、ちょうど真ん中くらいまで読んで沈没するくらいの本が、一番勉強の助けになるのだ。最後まで読み通せる理科系の本は、読む人にとっては少し簡単すぎるかもしれない。(西野、同書、p187-188)・・くり返すけど、途中で沈没するくらいの本が、自分のレベルにピッタリであることをお忘れなく。(p195)・・結局は、何かのためにベクトル解析が必要になるまでは、幾ら勉強しても忘れてしまう物なんだ。(p197)

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補注 私はこの西野ベクトル解析本を3日かけて読み通すことができた。一応沈没することなく。ただし、内容はかなり難しく、もう一度読み返してみたいと思いながら読み進めた。なお、同書p195では、「1から学ぶベクトル解析」の教科書として、「H.P.スウ著・高野一夫訳 ベクトル解析 森北出版 1980年」が推薦されている。演習問題がタップリ入ったような体育会系・頭脳筋肉モリモリの教科書とのこと(西野、同書、p199)

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