literature & arts

ぼくたちがもし貧乏になったら、ぼくが働きます

2019年12月7日 土曜日 晴れ

ドストエフスキー 白痴1 亀山郁夫訳 2015年(原書は1868年)

・・あなたのためなら、死んでもいい・・ナスターシャさん、ぼくはだれにも、あなたの陰口など叩かせません・・ナスターシャさん、ぼくたちがもし貧乏になったら、ぼくが働きます・・(亀山訳、同書、p410)

「・・ナスターシャさん、あなたは誇り高い方ですが、もしかすると、不幸のあまり、ご自分にほんとうに罪があると思いこんでおられるのかも知れない。ナスターシャさん、あなたには、いろいろと世話をしてあげなくてはならない。ぼくがその世話をします。さっきあなたの写真を見たとき、昔なじみの顔に出合ったような気がしました。そのときすぐに、あなたがぼくを呼んでいるような気がしたのです・・ぼくは・・ナスターシャさん、あなたのことを一生大切にします」(亀山訳、同書、p421)

「・・公爵! あなたがいま必要なのは、アグラーヤ・エパンチナさんね、ナスターシャ・フィリッポヴナなんかじゃないの、でないと、フェルディシチェンコさんに後ろ指差されますよ! あなたは恐くないかもしれないけれど、あなたをだめにしたとか言われて、あとで責められるのはいや! ・・」(亀山訳、同書、p423)

「・・見あげた完璧ぶりじゃないの! だってたしかに、百万ルーブルと公爵の爵位を蹴ったと自慢したいために、わけのわからない巣窟に身を沈めるっていうんだもの、そう、こんなので、どうしてあなたの奥さんになんかなれるもんですか。トーツキーさん、わたしね、百万ルーブルのお金をほんとうに窓の外に投げ捨てたわ。・・」(亀山訳、p424)

「・・わたしがあんたのこと、夢に見なかったと思う? あんたの言ったとおり。もうずっと夢に見ていたんだから、まだあの人の村で、五年間ひとりぼっちで過ごしていたときからよ。考えて、考えて、夢に見て、夢に見て。そうしてずっと、あんたみたいな人を空想していたの。優しくて、誠実で、いい人で、あんたみたいなちょっとしたおばかさんが、いきなりこんなことを言い出すの。『ナスターシャさん、あなたは悪くない。わたしはあなたを崇めている』って。そう、そんな夢をさんざん見てきたの。・・」(亀山訳、同書p427-428)

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