culture & history

ドネツクとルガンスクはロシア系住民が多い: 移民で読み解く現代史。

2022年2月15日 火曜日

https://tanakanews.com/220214ukraine.htm 田中宇さんの記事より<以下引用>

私が見るところ、米国が発する2月16日侵攻説は根拠がある。それは、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの2州が2014年のウクライナ内戦開始時からずっと宣言し、ロシアに承認を求めてきた「東部2州のウクライナからの分離独立とロシアへの併合」について、ロシア連邦議会下院(デューマ)が2月14日に審議し、プーチン大統領が東部2州のロシア併合を認めてくれるよう請願する決議を可決する可能性があることだ。ドネツクとルガンスクはロシア系住民が多く、ウクライナの政府と軍から敵視攻撃されてひどい目にあっている。1月の記事で書いたとおり、ロシアの世論は、2州のロシア併合を認めてやるべきだと強く思っている。ロシアのナショナリズムの流れに沿って、ロシア議会で1月中旬から2州のロシア併合を認めてやるべきだと話が出ている。 (At Russia’s Border with Ukraine, Pro-Kremlin Separatists Find Support) (ロシアは正義のためにウクライナに侵攻するかも

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ウクライナ政府がミンスク合意の枠組みで急いでロシア政府と話し合いたいと言い出したという報道が流れてきた。ドイツの首相も、ロシアとウクライナを歴訪するらしい(これは以前からの予定みたいだが)。新たな外交の盛り上がりによって、ロシアが2州併合を延期するのかどうか。これまでの時間稼ぎ型とは違う、進展する話し合いをやれるのか。この事態が続くほど世界のエネルギー価格が上がり、インフレが欧米経済を潰していく。どうなるのか。https://tanakanews.com/220214ukraine.htm より引用終わり。

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神野正史 移民で読み解く世界史 イースト・プレス 2019年

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東欧世界に拡がっていったスラヴ系

スラヴ人: ドニエプル川中流域に発祥。

・・キエフを中心にドニエプル川一帯に拡がっていった部族が「東スラヴ人」となり、・・(神野、移民で読み解く世界史 p186)

ロシアの“幼児体験”

・・9世紀に入ると、北欧を中心にノルマン民族が活発化・・その影響で北のノルマン人と南のビザンツ帝国を結ぶ交易路「ヴァリャギからグレキへの道」が拓けます。  ロシア人はちょうどその交易路上に位置していたため、これに触発されて国家建設に向かい、やがて「ノヴゴロド公国(862年)」が建設されましたが、これがロシアの起源となります。

・・ノヴゴロド公国から分封されたキエフ公国の時代にロシア統一を果たしたものの、それも束の間、その後ロシアは戦国の様相・・

・・さらにそんな折り、13世紀には西からゲルマンの侵寇(東方植民)、東からモンゴルの侵寇を受けてロシアは「タタールの軛」と言われる受難の時代を迎えました。

 こうした経験が“幼児体験”となって、ロシア人の心の奥底に“強迫観念”が深く刻まれることになります。

 ーー殺られる前に殺らねば、こっちが殺られる! (神野、移民で読み解く世界史 p188)

・・歴史的には四方から異民族の侵寇を受け、永きにわたってその支配下に置かれるという“幼児体験”を重ねたことで、本能的に「領土を拡げてこれを“緩衝帯”とする」ことで身を護ろうとするロシア人特有の民族性を纏うようになっていきます。

「移民(民族移動)」によって生まれたロシアは、

「移民(侵寇)」によって辛酸を味わわされたあと、

「移民(膨張政策)」によって領土を拡張していくことになったのです。(神野、同上、p190)

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悲劇のウクライナ

・・対ソ干渉戦争を凌いだ新生ロシアはただちにシベリアを併呑し、ベラルーシ・ウクライナ・ザカフカースを「連邦(ソユーズ)」として組み込むことに成功、所謂「ソ連(ソヴィエト社会主義共和国連邦CCCR)」として生まれ変わりました。

 しかし、このソ連は「労働者(プロレタリア)」の利害を代弁する社会主義国家でしたから、有産者にはとにかく厳しい。

 資本家を亡ぼすまで共闘した農民すら、利用するだけ利用して、革命達成後は目の仇にされていく中、大穀倉地帯であったウクライナはすさまじい収奪を受けるようになります。

・・・(中略)・・・

 ソ連最大の穀倉地帯・ウクライナでも大飢饉が発生しましたが、スターリンは大豊作の収穫量に合わせた年貢を強制徴発させたため、莫大な餓死者を出します。・・「ホロドモール(飢餓 大虐殺)」と呼ばれている大量虐殺事件です。・・およそ1000万人前後と言われ、同じ時期のヒトラーによる「ホロコースト」などよりも比較にならないほど規模が大きいものでした。(神野、同書、p194)

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一歩間違えれば日本も・・

 こうして文字通りの“死屍累々”となったウクライナ。

 スターリンは、そうして主を失って放棄された“空き地”にロシア人をぞくぞくと植民させます。

 最初から“これ”が目的で故意に起こされた飢饉と目され、・・そのためにウクライナは現在に至るまでその東部にはロシア人が、西部にはウクライナ人が多く住むという民族配置が生まれてしまいます。

 それだけではありません。

 第二次大戦中の1944年には、対独協力を行ったとの嫌疑をかけてクリミア半島に住んでいた先住民(原注#)をウズベキスタン方面へ強制移住させ(クリミア・タタール人追放)、そのほとんどは餓死させられたか、強制労働を強いられます。(原注##)

 ウクライナのとき同様、こうして“空き地”となったクリミアにロシア人を入植させました。

 原注# クリミア半島はロシア帝国に併合されるまではオスマン帝国、その前はクリム汗国の支配にあったため、トルコ系民族が多く住んでいました。

原注## ホロドモールとともに、このときの強制移住も「ジェノサイド認定」されています。(神野、同上、p194-195)

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ウクライナ危機が起こった理由

 ・・ウクライナはロシアによって民族的に分断されていましたから、ウクライナ国内でも西側につくか、ロシア側に付くかで世論は真っ二つ!

 これが「ウクライナ問題」を引き起こし、米露対立を尖鋭化させ、第三次世界大戦まで懸念されることになった理由です。

“対岸の火事”ではないウクライナ&日本 (神野、同書、p198)

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補註:2022年2月22日追記 ロシアがウクライナ東部2州を併合しそう? もご覧ください。

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