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チャペック ダーシェンカ あるいは子犬の生活

2016年12月20日 火曜日 曇り

カレル・チャペック ダーシェンカ あるいは子犬の生活 子供たちに 保川亜矢子訳 SEG出版 1995年(本書はチェコ版からの翻訳、装丁は第五版と同じ装丁、初版は1933年)

著作、挿絵、写真および体験は、カレル・チャペック。(補註 チャペック本の挿絵の多くは、お兄さんのヨゼフ・チャペックによるものであるが、本書の絵はすべてカレル本人によるものである。)

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ところが家の中は、急に火が消えたようになってしまった。一体これは、どうしたことだろう。私たちは、おたがいに目をあわさないよう、さけている。部屋のすみを見ても、もうあの子はいないのだ。おしっこをしたあとも、どこにもない・・・・。  犬小屋では、毛をむしられ、疲れ切ったおかあさんのイリスが、ひっそりと目をしばたかせながら泣いている。(チャペック、同書、p31)

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人間について
 動物たちの中には、人間たちは悪党だ、と言い張るものがいるし、そう言っている人間もたくさんいる。だからといって、それを信じてはいけないよ。人間がそれほど悪くて冷酷なら、おまえたち犬が、人間の仲間に加わることはなかっただろうし、今でも、ステップで野生のまま暮らしていただろうからね。でも、人間と友だちでいるということは、何千年も前から、人間になでてもらったり、耳の後ろをかいてもらったり、ごはんをもらってきたということがわかっているからなのさ。・・・(中略)・・・ ときには通りで、犬どうし遊んで、楽しくゆかいになることもあるだろう。おまえの血と生まれがそうさせるんだ。でもねダーシャ、うちにいるんだ、という気持ちになれるのは、人間といるときだけだ。人間とおまえを結んでいるものは、血よりもずっと不思議でやさしい何かなんだよ。その何かっていうのは、信頼と愛なんだ。  さあ、いっておいで。(チャペック、同書、ダーシェンカに聞かせるお話 p50-51)

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補註 私自身は今日初めてこの本を手にした。この季節、親しい人へのプレゼントにも最適な本であろう。簡単に読み通せてしまうけれども、書棚のどこかに置いて、いつまでも手元に持っておきたい本になるだろう。

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