2016年12月26日 月曜日 曇り(陽射しあり)
陳舜臣 実録アヘン戦争 中公新書255 1971年
・・真相はその正反対である。アヘン貿易を認めさせるのが戦争の主目的であって、変則貿易形式打破のほうが、単なる口実にすぎなかった。・・
ーーーアヘンを持ち込まない。
エリオットが自国民に、この誓約を禁じたが、それはアヘンを持ち込むつもりでいたからにほかならない。
アヘンこそは、疲弊したベンガル政庁の財政にとって、命の綱ともいうべき収入であった。清国がアヘンを買わなくなれば、英国のインド支配は揺らぐのである。イギリスは、どうしてもアヘンのために戦わねばならなかった。
アヘンのための戦い。ーーーこの不義の戦争を弁護する説は、すでに当時からあった。・・これもまことに明白な「すりかえ」にほかならない。・・ともあれ、アヘン戦争はあくまでもアヘンのための戦争であり、中華思想の鼻を折ったり、公行独占の変則貿易が打破されたのは、たんにその結果であって、けっして主たる目的ではなかった。(陳舜臣、同書、p197-198)
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アヘン戦争におけるアメリカの姿勢:漁夫の利
・・在留米人の保護にかけては、この艦隊(アメリカの東インド艦隊)はたしかに熱心であったが、同国人のアヘン貿易制止という目的は、ただの看板にすぎなかったようだ。それどころか、星条旗はアヘン貿易の唯一の掩護者となっていたのが実情であったらしい。このことは、カーニー提督自身が、海軍省への報告のなかで認めている。
だが、アメリカの艦隊は、米国人が清国の法律に違反してアヘン貿易をするのを制止に来たのだということを、中国文に訳してあちこちにばらまいたので、清国人民は大いに好感をもった。・・・(中略)・・・ こんなふうに良い子になりつづけながら、イギリスが軍艦と大砲で獲得したのと、ほとんどおなじ成果(いわゆる望厦条約)に、アメリカはありついた。・・アメリカにすれば、イギリスの獲得する成果が大きければ大きいほど、おのれの国益も大きくなるので、内心は戦争の拡大と清国の徹底的な屈服を望んでいたのにちがいない。・・しかしながら、このときのアメリカの姿勢のため、中国には親米ムードが瀰漫して、朝鮮戦争にいたるまでそれがつづいたのである。(陳舜臣、同書、p210-212)
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