2023年3月19日 日曜日 腫れ
ジョン・アール・ヘインズ&ハーヴェイ・クレア 中西輝政監訳 ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動 扶桑社 2019年(John Earl Haynes and Harvey Klehr, VENONA, Decoding Soviet Espionage in America, 1999 by Yale University; 本訳本は2010年に発刊された訳本の復刊)
**
ソ連のスパイだったアメリカの政府高官たち
・・驚くほど多くの数のアメリカ政府高官がソ連とつながっていたことが、「ヴェノナ」解読文によって判明した。彼らは、そうと知りつつソ連情報機関と秘密の関係をもち、アメリカの国益をひどく損なう極秘情報をソ連に渡していたのである。アメリカ財務省におけるナンバー2の実力者で、連邦政府の中でも最も影響力のある官僚の一人であり、国際連合創立のときのアメリカ代表団にも参加していたハリー・デクスター・ホワイトが、どのようにすればアメリカの外交をねじまげられるかをKGBに助言していたこともわかってきた。(ヘインズ&クレア、同訳書、p39)
**
誰が裏切り者なのか?
「ヴェノナ」解読文は、1948年から1950年代半ばまでの間にアメリカの防諜機関が探知していたソ連スパイの大半の身元を明らかにした。(同訳書、p41)
・・ソ連情報機関と秘密のつながりがあると「ヴェノナ」解読文が暴いた349人のアメリカ人のうち、本名で特定できたのは半数以下であり、200人近くが誰だかわからないカバーネームのままだった。(同訳書、p42)
**
「KGBの通信文はほんの一部しか解読されていないため、ある特定の人物や事柄について語られていないからといって、そこから何らかの答えを導き出すことはできない。(同訳書、p461)
**
原因はフリーパスでの大量採用
・・1930ー1940年代を通じ、何百人というアメリカ人がソ連諜報部と強固な組織的関係をもってアメリカの国家機密をモスクワに知らせる諜報活動に従事していた。このことが、「ヴェノナ作戦」に基づく暗号解読文書によって今日、はっきりとわかったのである。(同訳書、p464)
・・・・米連邦政府内に潜入していたソ連のスパイは、その数の多さにも驚くが、彼らがそこで占めた地位の重要度はさらに驚くべきものであった。たとえばその中には、ルーズベルト大統領の政務補佐官のラフリン・カリーがいたし、原爆開発プロジェクト(マンハッタン計画)の中枢には多くのソ連スパイが科学者として潜入していた。・・・(中略)・・・ 連邦政府のあらゆる重要な部署に、数十を越えるソ連のスパイや情報源が潜入していた。
こうした、政府に潜り込んでいた情報源としてのスパイ以外に、ソ連の諜報活動に協力する多くのアメリカ人がいた。・・・以下略・・・(同訳書、p464-465)
**
・・ほんのわずかなものだけが傍受可能な通信で送られ、そのうちごくわずかの通信が「ヴェノナ作戦」で解読されたにすぎなかったからである。むしろアメリカにいたソ連スパイがもたらす報告や盗み出した文書のコピーなどの大半は、ソ連諜報部のクーリエの手によってソ連に運ばれていたのである。そしてそれらの文書は、現在もロシアの文書館に非公開のまま眠っている。(同訳書、p466)
**
イデオロギーが育てたソ連スパイ(同訳書、p467ー)
・・共産主義に対するイデオロギー上の忠誠心から、自ら進んでKGBやGRUと接触を図り自発的にソ連の諜報活動に加わったのである(同書、p468)
**
**
*****
*********************************