culture & history

部首のはなし:漢字を解剖する

2016年2月9日 火曜日 雪・曇り

阿辻哲次 部首のはなし:漢字を解剖する 中公新書1755 2004年 (初出は大修館書店「月刊しにか」に2001年から2年間連載した「部首のはなし」。これを加筆したもの)

ウは宇宙の宇(う)
「ウ」は「宇」という漢字からできたカタカナ(阿辻、同書、p26)

国字は中国の文献には原則的に登場しないが、国訓は中国で使われる漢字に関して日本人があたえた意味だから、文字そのものは中国の文献にもよく出てくる。・・・たとえば「太」を「ふとい」「ふとる」という意味で使うのは日本独自の用法で、中国にはその使い方がない。だから「太」を「ふとい」と読むのは国訓である。中国では「太」という漢字を、もっぱら「はなはだ・とても」という意味で使う。・・・同じようによくまちがわれるのが「届」という漢字で、中国ではこの字を「とどける」という意味では使わない。ちなみに「届」の音読みはカイである。中国の古い文章ではこの字を「(時期が)やってくる」とか「(期限に)いたる」という意味で使い、また現代中国語では「第一届全体会議」というように、会議などの回数を数える文字として使われる。(阿辻、同書、p31)

「巨」は本来<工>部二画に配置される漢字である。・・・それは正しくは・・上下の横線を少し左へはみだして書かれるべき漢字だった。・・・<工>はさしがね(定規)の形をかたどった象形文字である。だからこそ「工」に「たくみ」とか「職人」という意味があるのである。・・・(中略)・・・「巨」は、<臼>部で取りあげる「与」などと同じように、終戦直後の昭和二十一年(1946)に制定された「当用漢字表」で字形が変更された漢字の一つで、字形の変更に連動して、所属する部首まで変えられることとなった。(阿辻、同書、p40-41)

象形や会意という方法では文字化しにき概念も、それと同音の文字を「音符」(発音を示す要素)として使うことで、いくらでも、そしてたやすく文字化できた。(阿辻、同書、p53)

「まぜ書き」:
「甜菜」が教科書で「てん菜」と表記されているのは「甜」が常用漢字に入っていないからである。・・・いずれにしても表外字(常用漢字に入っていない漢字)だけを仮名書きする「まぜ書き」による表記では、わかるものもわからなくなってしまう。 新聞などで「チャンピオンベルトのはく奪」とか、「えん恨による殺人」というような書き方を見るたびに、そんな鵺(ぬえ)的な気もち悪い書き方を一日も早く絶滅させてしまいたいものだ、と思う。(阿辻、同書、p73)

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補注:
阿辻さんのこの新書本は、説文解字(せつもんかいじ)などからの引用が主であり、著者自身の得た新しい学説を提案するというタイプの入門本ではなかった。また、白川静さんの著書からの引用は見られない。特に、白川漢字学を外から眺め、若い世代の学者がどのように白川漢字学を捉え発展させているかを知りたくてこの本を手に取ったことからすると、少し残念な読書時間であった。

補注:
「まぜ書き」とパソコン文字変換:
「まぜ書き」をワープロで打つのは容易(たやす)い、ということに気づいた。甜菜、てん菜、剥奪、はく奪、怨恨、えん恨、諫(かん)言などスペースキーを1回押すだけで容易に選べるようになっている。わざわざ自分でユーザー辞書登録した覚えはないので、私の使っているATOKの基本辞書のなかにすでにまぜ書き語として多くが登録されているに違いない。「まぜ書き」は見ただけでは意味が採れず、頭のなかで一旦漢字に変換してやっと理解できる。漢字の読みから派生しているのに、漢字で書かないから回りくどくなってしまう。思考の流れを一旦停滞させる表記法である。ワープロ文字変換の機能が充実した現代にあっては、「まぜ書きはできるだけ無くそう」というコンセンサスができてよいと思う。私も阿辻さんの意見に賛成である。

補注: 
地名に出てくる「太」の読みについて: 
北海道では「太」という地名にしばしば出会う。道路標識のローマ字表記を見れば、「ぶと」と読ませることがわかる。アイヌ語の「河口」とのこと。河が河や海に注ぎ込む場所(つまり河口・合流口)を示すようだ。太を「ふと」と読むことが国訓であり、これをさらに濁って「ぶと」と読んで、地名にしてしまったのである。しょっちゅう出会う地名にもかかわらず、私にはとても読みにくかった。分かってしまうとなぜか愛着の湧く音と表記ではある。以下はネットより引用:

<以下引用> http://pucchi.net/hokkaido/geo/place02.php

「太」は「ブト」と読むことが多いのですが、アイヌ語の「put(プトゥ)」つまり「河口」を指します。道内には有名な「太」があって、そのいずれも河口近くを指す地名なのです。だから、「○○太」という地名を聞いたら、その名前の河川の河口または合流口を想像できます。

 代表的なものは住所の一部となっているもので、「空知太」。空知川という富良野方面から滝川砂川付近まで流れる河川で、滝川砂川付近で石狩川と合流します。砂川市には空知太という地名が存在します。かつて空知太駅逓や空知太駅がありました。「条」の地名があります。

 「江別太」は江別市の地名。屯田兵が入植しました。現在は江別太小学校があるため、地元ではメジャーな地名となっています。いまは江別川とは呼びませんが、現在の千歳川の石狩川との合流地点となっています。

 「当別太」は当別町当別川の石狩川との合流地点にある地名。「漁太」(いざりぶと)は恵庭市漁川の千歳川と合流するところにあります。「夕張太」は夕張市にあるのではなく、また、夕張川の石狩川との合流地点にあるのでもないので不思議に思いますが、実は旧夕張川の合流地点が正解です。それは北広島に近い空知管内南幌町にあります。

 「芽室太」は十勝管内芽室町の芽室川が十勝川に合流するところにあります。その十勝川の河口付近(十勝管内浦幌町)にある浦幌十勝川河口は「十勝太」となっています。この川はもともと十勝川本流でした。

 道内にはほかにも「太」がありまして。三笠市街地は「幌内太」でした。幌内鉄道時代、幌内太駅が設置されていました。日高管内日高町富川は「沙流太」でした。駅名としても使われていた時代がありました。

以上、http://pucchi.net/hokkaido/geo/place02.php より引用。

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