2016年6月16日 木曜日 雨の前の曇り
一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年 p182-183
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山中の春暁 鳥声を聴く 高啓
子規(しき) 啼き罷(おわ)りて 百舌(ひゃくぜつ) 鳴く
東窓 臥して聴く 無数の声
山空しく 人静かに 響き更に切なり
月は杏花(きょうか)に落ちて 天 未だ明けず
訓み下しは一海さん、同書、p182
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鳥声を聴くというのだから、唐の孟浩然「春暁」詩の「処処啼鳥を聞く」というのとは異なる。聞く、は自然にきこえて来のであり、聴く、は耳を傾けてきくのである。・・・(中略)・・・山はがらんとして人もまだ寝静まる中で、鳴き声はいっそう鋭くひびく。月は杏(あんず)の花かげに沈んだが、空はまだ明けやらぬ。 ほとんど解説を要しない表現の平易さ、それはこの詩人の詩の特徴の一つだが、その平易な表現の中に、まだ明けやらぬ山中の春を写してたくみである。(一海、同書、p182)
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