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夢覚めて 流鶯 時に一声

2016年6月17日 金曜日 昨日に続いて雨

一海知義 漢詩一日一首 平凡社 1976年

夢覚めて 流鶯 時に一声

夏意 北宋・蘇舜欽 (原文は碇豊長さんのサイトより引用)
http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/shi4_08/pbt_shi204.htm

別院深深夏簟淸,
石榴開遍透簾明。
樹陰滿地日當午,
夢覺流鶯時一聲。

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別院 深深(しんしん) 夏簟(かたん)淸く,
石榴(せきりゅう) 開くこと遍(あまね)く 簾(すだれ)を透して明らかなり。
樹陰 地に滿ちて 日 午に當たる,
夢覺めて 流鶯(りゅうおう) 時に一聲。
(訓み下しは、一海、同書、p204-205)

別院とは、離れ邸(やしき)の中庭。深深と、奥深くひそまる、離れ座敷の中庭、そこにしきのべた夏簟(あるいは夏席)、竹であんだ夏の寝ござは、さっぱりとしてすがすがしい。
ザクロが満開の花を付け、すだれごしにそこだけがぱっと明るく見える。
樹々は庭いっぱいにかげをおとし、日ざしはちょうどいま真昼。
昼寝からさめた、その時、枝を移るウグイスのひと声。(一海、同書、p205)

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補注 鶯がわが国のウグイスと異なることについては、青木正児著「中華名物考」(春秋社)に考証がある。(一海、同書、p205)・・・彼我の違いに関しては私も今始めて知った。

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補注 蘇舜欽 ウィキペディアによると・・・
蘇 舜欽(そ しゅんきん、1008年 – 1048年)は北宋時代の政治家・文学者。字は子美。
開封の出身。参知政事であった蘇易簡の孫でもある。若い頃から世を慷慨し、軍事論を好み大志があった。初めは父の推挙により太廟齋郎に任命され、景祐年間(1034年 – 1038年)に進士に合格し、知長垣県をへて大理評事となった。康定年間(1040年 – 1041年)、河東に地震があったときに蘇舜欽は上疏し当時の政治の欠陥を論じて范仲淹に認められ、集賢校理となり進奏院を監督し、時の宰相・杜衍の娘を娶るまでになった。
「公銭を用いて妓楽を召し、賓客をもてなした」という理由で、おもに范仲淹の反対派により弾劾され、蘇州に流遇することになる。水石を買って「滄浪亭」を造り、自らも「滄浪翁」と号して読書につとめ、憤りを詩にあらわした。のちに湖州の長吏となり、その地で没する。
詩と著作:
天聖年間(1023年 – 1031年)に多くの学者が修飾の多い美文を書いていた中で、河南の穆修とともに古体による詩を書き、欧陽脩の賞賛を得た。草書にも優れていたという。
著作に『蘇学士文集』16巻、『聞見雑録』、『滄浪集』がある。

淮中晩泊犢頭
春陰垂野草青青  春陰は野に垂れて草青青
時有幽花一樹明  時に幽花一樹の明らかなる有り
晩泊孤舟古祠下  晩に孤舟を泊す古き祠の下
滿川風雨看潮生  川に滿つる風雨に潮の生ずるを看る

以上、ウィキペディアより引用終わり

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中国の鶯 ウェブサイトで調べると・・・
以下、引用 http://haijimadaishi.com/nyoirin/【漢字講座】鶯(うぐいす)/ より。
・・・そこで鶯は本来は羽根の色が多彩で美しい鳥を意味しました。中国の古典中の古典である『詩経』小雅、桑扈に「交交たる桑扈、鶯その羽有り」という一句があります。桑扈は小鳥の名で和名「まめまわし」とされます。
 中国古代でも鶯はウグイス類の鳥の総称とされたようです。因みに現在の生物学種の分類でも世界には300から400種があり、日本には約15種あるといいます。
どうも中国・朝鮮のウグイスと日本のウグイスは種が異なるようで、中国・朝鮮では「こうらいうぐいす」といい、日本の普通のウグイスより大きく、体は黄色で羽根及び尾は黄色黒色混じり、雌雄並び飛んで織機の出す音のようなシャ-シャ-という声を出し、日本のウグイスの鳴き声とは違うのです。唐杜牧の「江南春」では鶯が冒頭に詠ぜられます。
千里、鶯啼いて、緑、紅に映ず、水村山郭酒旗の風、南朝四百八十寺、多少の楼台烟雨の中
この鶯が日本のウグイスと異なることに注意する必要があります。因みに中国では鶯の別名には黄鸝・黄鳥・黄袍・鵹黄・黄飛・金羽・黄伯鳥・金公子・金衣公子はその羽に色が鮮やかな黄色であることによるものでしょう。そのほか、倉庚・商倉・博黍も穀物の黍の黄色の連想です。ただ、日本同様に報春鳥・春鳥もありますが、早春ではなく春爛漫の盛春のようです。
以上、http://haijimadaishi.com/nyoirin/【漢字講座】鶯(うぐいす)/ より引用。

補注 コウライウグイス ウィキペディアによると・・・
コウライウグイス Oriolus chinensis
界 : 動物界 Animalia
門 : 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
綱 : 鳥綱 Aves
目 : スズメ目 Passeriformes
科 : コウライウグイス科 Oriolidae 
属 : Oriolus
種 : コウライウグイス O. chinensis
学名 Oriolus chinensis Linnaeus, 1766
英名 Black-naped oriole
コウライウグイス(高麗鶯、Oriolus chinensis)は、動物界脊索動物門鳥綱スズメ目コウライウグイス科に分類される鳥。
分布  種小名chinensisは「中国産の」の意。
インド、インドネシア、カンボジア、シンガポール、韓国、中国、台湾、北朝鮮、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、ラオス、ロシア 日本では主に日本海側に渡りの途中に稀に飛来する(旅鳥)例がある。

以上、ウィキペディアより引用終わり

補注 コウライウグイスの鳴き声についてはユーチューブなどにアップされているもので聴くことができます。
たとえば、以下のサイトを参照下さい。


http://outdoor.geocities.jp/phyllon2000/Wildbird/Oriolus_chinensis.html

補注 コウライウグイスの鳴き声と我が国のいわゆる鶯の声とを比較すると、私見だが、法華経の(少なくとも発声の)習得に関しては後者の方が修行を積んでいると思った。(コウライウグイスは、全く別の鳴き方である)

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